著者
佐藤 豊展 近藤 健男 柴本 勇 出江 紳一
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.3-10, 2021-04-30 (Released:2021-08-31)
参考文献数
28

【はじめに】舌挙上は舌骨上筋群の筋力を強化する訓練として適用されることが報告されている.筋力を強化する際,運動負荷量を適切に設定する必要があるが,舌骨上筋群の筋力を強化するための舌圧の強度は明らかになってはいない.そこで本研究は,健常若年者と健常高齢者を対象に,1)舌圧と舌骨上筋群の筋活動の関連性,2)舌骨上筋群を筋力強化するための舌圧強度について明らかにすることを目的に行った.【方法】対象は健常若年者15 名(27.1±2.6 歳,平均±標準偏差;以下同様),健常高齢者12 名(76.0±3.0 歳)とした.測定課題は頭部挙上と舌挙上の全6 課題とした.舌挙上は最大舌圧,舌圧80%,舌圧60%,舌圧40%,舌圧20%の5 課題を行った.測定装置は舌圧測定器と表面筋電図を使用した.被験筋は舌骨上筋群とした.統計解析は舌圧と舌骨上筋群の筋活動の関連についてピアソンの積率相関係数を行った.また,舌骨上筋群を筋力強化するための舌圧強度について,線形単回帰分析を行った.【結果】健常若年群と健常高齢群ともに,舌圧と舌骨上筋群の筋活動に強い正の相関を認めた.健常若年者では65%,健常高齢者では50% の強度で舌圧発揮を行うと,頭部挙上時の舌骨上筋群の筋活動と同程度の筋活動が得られた.【考察】健常高齢者において,50% の強度で舌圧発揮を行うと,舌骨上筋群の筋力を強化できる可能性が示唆された.今後,持続時間や頻度などの運動負荷量,舌前方部や舌後方部などの位置について検討が必要と考えられる.
著者
佐藤 豊展 近藤 健男 柴本 勇 出江 紳一
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.12-19, 2018-04-30 (Released:2019-03-07)
参考文献数
28

【はじめに】頭部挙上訓練は,舌骨上筋群の筋力強化訓練として広く用いられているが,胸鎖乳突筋の筋活動が高く,早期に筋疲労を起こすことから施行することが困難な場合が多い.舌挙上は頭部挙上訓練に代わる喉頭挙上の訓練として有用であることが報告されているが,健常若年者を対象とした報告であり,健常高齢者を対象とした報告は筆者らが検索しうる限りみられない.そこで本研究では,舌挙上が喉頭挙上の改善を目指した訓練として用いることができるか,表面筋電図を用いて検討した.【方法】対象は健常若年者 15名(27.1±2.6歳),健常高齢者 12名(76.0±3.0歳)とした.測定課題は,最大舌圧での舌挙上,頭部挙上,メンデルソン手技とした.表面筋電図を使用し,舌骨上筋群,舌骨下筋群,胸鎖乳突筋の電位変化を記録した.【結果】舌骨上筋群の筋活動は,健常若年者,健常高齢者ともに舌挙上が頭部挙上,メンデルソン手技より有意に高かった(p< 0.01).舌骨下筋群,胸鎖乳突筋の筋活動は,舌挙上が頭部挙上より有意に低かった(p< 0.01).【考察】舌挙上は頭部挙上と比較して,胸鎖乳突筋や舌骨下筋群の筋活動が低く,舌骨上筋群をより効果的に活動させることができ,健常高齢者においても喉頭挙上の改善を目指した訓練として用いることができる可能性が示唆された.