著者
崔 暁 加藤 ゆうこ 佐藤 靜治 須藤 鎮世
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.333-337, 1996-04-25

哺乳類の性決定遺伝子はSRY(ヒト)/Sry(動物)であるといわれるが,我々はウシのSry遺伝子をウシのゲノムライブラリーからクローニングし(本誌,66,994-1001,1995),また,FISH法によりY染色体長腕の末端にマッピングした(本誌,66,441-444,1995).PCR法によりヒツジおよびヤギのSry遺伝子の一部(HMGボックス)はウシのSry遺伝子と相同性が高いことが判明したので,ウシのSry遺伝子を用いてヒツジおよびヤギの染色体に対するFISH法を行った,ヒツジ(メリノ種)の染色体は出生直後死亡した雄の肺由来の培養細胞から,ヤギ(ザーネン種)の染色体は雄の血液細胞を培養して得た.その結果,ヒツジではY染色体の長腕に,ヤギでは同じく長腕の末端にマッピングされた.両種ともにY染色体は短く,ヒツジSryの絶対距離は末端に近いといえる.SRY/Sry遺伝子はヒトやマウスでもY染色体の末端またはその近傍(ともに短腕上)にある.精子形成に関与するといわれるZFY/Zfy遺伝子もヒトおよびマウスでSRY/Sryの近傍にあるが,ウシ,ヒツジ,およびヤギでも末端近くに位置する(未発表).マウスのH-Y抗原遺伝子はやはりZfyの近くに位置する.これらのことから,相同の染色体対からY染色体が進化する過程で,染色体内組換えや欠失により,機能を有する遺伝子はY染色体の末端へ追われたものと想定される.