著者
佐藤(粒来) 香
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.78, pp.55-65, 2002

本稿は2000年東京版総合社会調査データをもちいて、戦後の高度経済成長期およびそれ以降の東京における社会移動がどのようなものであったかを明らかにしたものである。基本的な分析枠組としては、リプセットとベンディクスが提示した都市移住モデルを参照にしている。1970年以降に生じた東京への人口流入の減少をうけて、2000年時点での40歳代以下の年齢層では、それ以前の世代とは異なり、東京出身者のほうが流入者よりも構成比において大きな比重を占めるようになっている。このことから、50歳代・60歳代を流動期世代、20~40歳代を安定期世代とした。前住地のデータからみると、流入者の移動パターンにはそれほど大きな変化はなかった。東京出身者では、男性よりも女性のほうが総じてモビリティが高いが、若い世代ほど男女ともモビリティが低くなる傾向がみられる。また、こうした居住者の地域移動経験は地点によって異なっている。男性に限定して学歴および現職から社会移動のありかたをみたところ、流動期世代では学歴・現職とも東京出身者と流入者との問に違いはなく、社会移動のありかたに出身地による差異がみられない世代といえる。一方、安定期世代では、流入者のほうが相対的に高学歴ではあるが人数が少ないため、東京出身者が明らかに不利というわけではない。この世代の社会移動のありかたには、出身地による違いというよりも、学歴による違いが大きくあらわれている。ここでの分析からは、どちらの世代についても、リプセットとベンディクスが提示した都市イメージが成立するとはいえない。