著者
佐野 秀仁 大木 紫 里見 和彦
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.26-37, 2010 (Released:2011-01-07)
参考文献数
15

(背景)ヒトの腕の運動指令を伝える経路には,錐体路から直接運動ニューロンにシナプス結合する経路とC3-4に存在するpropriospinal neuron(PN)等を介して間接的に伝える経路が存在すると言われている。患者で間接経路の機能評価を行う基礎として,検査法確立を試みた。(方法)正常被検者の右または左腕の上腕二頭筋から表面筋電図を記録,同側の尺骨神経の電気刺激と反対側運動野の経頭蓋磁気刺激の組み合わせ刺激を実施,刺激強度を系統的に変えた。(結果)全被検者で組み合わせ刺激により上腕二頭筋で観察される誘発電位の振幅が大きくなり,間接経路を介した効果が確実に観察できた。また,右利き正常被験者では利き腕側でこの促通効果が強いことが観察された。(結論)本評価法により,PNを介する間接的皮質脊髄路の機能が評価できることが示された。右利き正常被検者で促通効果に左右差がみられたのは,手の使用頻度によりPNに対する錐体路入力の強さが変わるためと考えられた。