著者
佐野 雪子 巽 あさみ
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.15-24, 2019 (Released:2020-04-20)
参考文献数
27

目的:アルコール依存症者が断酒と就業を両立するプロセスを明らにし,支援方法を検討する.方法:A県断酒会員に所属し就労しているアルコール依存症者9人に,半構造化面接にて断酒と就業継続に関する質問を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した.結果:【酒に操られている自分】が【崖っぷちの決断】で入院治療を決意し【孤独を溶かす断酒会】につながり【職場復帰時の困苦】を感じつつも【復職あと押し職場】で【再飲酒ストップの自己起動】を稼働させながら【生まれ変わった自分】となり,【大事にしたい家族】のために【自分らしい働き方】をするプロセスであった.また,【再飲酒ストップの自己起動】はプロセスの中心となるカテゴリーであった.考察:アルコール依存症者は,職場・家族・断酒会との社会的相互作用から【再飲酒ストップの自己起動】の稼働や【自分らしい働き方】が可能となり,断酒と就業を両立していることが明らかになった.支援においては,<魔法の薬>としてアルコールを使用していた背景や心理を十分に理解すること,<再飲酒への不安>軽減のため安定期後も継続して関わることの重要性が示唆された.