著者
作田 尋路 工藤 卓
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

脳の情報処理機序の解明には,非線形な神経電気活動パターンのダイナミクスを理解することが重要である.また,近年ディープラーニング(DL)が多分野で高い識別精度を発揮している.そこで本研究では,ラット海馬から調製した生体神経回路網に対して,電気刺激を印加することで観察される誘発応答電位を含む神経電気活動を計測し,異なる刺激に対する応答パターンの識別に対するDL手法の有効性を検証した.時空間的情報の連続性を保持するようにしながら,入力データを画像として作成し,事前学習手法として積層オートエンコーダを用いた積層人工ニューラルネットワークで,神経電気活動パターンの特徴抽出を試みた.その結果,パターン識別の精度は充分ではなかったが,刺激直後2秒のデータのみを識別対象とすることで,識別精度は刺激直後10秒のデータを対象とした場合と比較して約2倍に向上した.神経電気活動のように「ゆらぎ」の大きい現象について,DLの手法によってパターン識別を行う場合は,分類判別基準に対するデータのゆらぎに応じた相当数の入力データが必須であることが確認された.