著者
佐藤 卓 池田 英男 古川 一 村田 雄司 供田 真由子
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.124, no.10, pp.705-709, 2004-10-01
被引用文献数
1 3

カンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linn.)は甘味剤, 胃腸薬などとして用いられる重要な生薬で, 日本における消費量は増加傾向にあるが, その大部分を海外, 特に中国からの輸入に頼っている. 2000年の日本のカンゾウ総輸入量は4151tで, このうち中国産は3250tを占め, 中国からの輸入は過去10年で最高となっている(厚生労働省, 2002). その一方で, カンゾウの乱獲による環境破壊が中国西北地域一帯で進行しつつあり, 中国政府は現在まで実施していたカンゾウの輸出許可制度を活用した輸出総量規制, 輸出港の限定による無許可輸出の防止, 輸出許可取得料の値上げ, 生産地に対する管理, 規制などを進めている. そこで, 中国では野生カンゾウの採集に代わり, 栽培によるカンゾウの生産を実施しているが, かならずしも日本薬局方の定めるグリチルリチン酸含有量を満たしていない. 一方, 個人輸入業者が主として販売する未承認医薬品による健康被害があとを絶たないことから, 既存の漢方や生薬においてもより厳密な品質管理が求められる可能性が考えられる.