著者
俊野 雅司
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.14, no.Special_issue, pp.S5-S8, 2021 (Released:2022-03-18)
参考文献数
13

新規株式公開(IPO)に関しては,アンダープライシングとアンダーパフォーマンスという2種類のアノマリーの存在が指摘されている.わが国のIPO市場に関しても数多くの先行研究が行われており,わが国特有のブックビルディング(BB)方式の仕組みや引受会社の仮条件の設定方法に原因があるのではないかという指摘が見られる.本稿では,2022年4月から東京証券取引所において大幅な市場改革が行われることに先立ち,先行研究のサーベイを行うとともに,1992年以降わが国でIPOを実施した2,950銘柄を対象にIPO前後の価格形成に関する追検証を試みた.その結果,公開価格の決定方法がBB方式へ変更されて以降,新興企業向け市場を中心に初値収益率の大幅な上昇傾向が再確認できた.ところが,BB方式への変更後は,本則市場への上場銘柄では中長期的にオーバーパフォーマンスが発生しているなど,わが国特有の価格形成が見られる.