著者
藪原 明彦 下島 圭子 保倉 めぐみ 石田 武彦 川合 博
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.494-501, 2004-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

1969年にイネ花粉嘱息について報告されたが,現在はイネ花粉のアレルギー発症への関与は少ないと理解されている.8月上旬に喘息または鼻結膜炎症状を認めた小児のアレルゲン感作状況と居住地を検討し,原因抗原として推測されたイネ花粉に対する特異IgEを測定した.対象は気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎/結膜炎の小児88例(男57例,女31例,8.5±2.9歳)で, 8月上旬に症状を認める群(21例)と認めない群(67例)とに分けて比較検討した.症状を認める群ではカモガヤ花粉に対する感作陽性率が高く(81%,P=0.008),水田地帯に居住する症例が多かった(86%,P<0.001).8月上旬はイネ花粉の飛散時期に一致するため,同時期に症状を認めた8例においてイネ花粉特異IgEを測定したところ,全例が陽性であった.また,イネ花粉とカモガヤ花粉を用いたRAST抑制試験からは両者に一部共通抗原性があるものの,イネ花粉に特異な抗原部位が存在することが示唆された.以上から,水田地帯で8月上旬のイネ花粉飛散時期にみられるアレルギー症状の発現に,イネ花粉が原因抗原として関与していると考えられた.