著者
市川 俊英 倉橋 伴知 幾留 秀一
出版者
香川大学農学部
雑誌
香川大学農学部学術報告 (ISSN:03685128)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.43-59, 2011-02 (Released:2012-12-03)

香川県内の自生植物および栽培植物の花とその周辺で活動中のハナバチ類(ミツバチ上科)の成虫を3年間(1996年~1998年)に亘って観察・採集した.その結果、導入種のセイヨウミツバチとセイヨウオオマルハナバチを含む6科22属54種のハナバチ類が採集された.土着種の中で年間6ヶ月以上の長期に亘る活動はニホンミツバチ(9ヶ月間)およびキムネクマバチ(7ヶ月間)で確認された.また、確認された訪花植物種数はキムネクマバチが最も多く、14科18種、次いでコマルハナバチが9科13種、それに続いてニホンミツバチとトラマルハナバチがそれぞれ8科9種であった.訪花中の雌成虫による盗蜜行動がキムネクマバチとクロマルハナバチで、振動授粉がキムネクマバチ雌、コマルハナバチ雌、トラマルハナバチ雌およびクロマルハナバチ雌でそれぞれ観察された.雌雄異株木本植物のアカメガシワ雄株でキムネクマバチ雌が振動授粉すると花粉が空中に飛散することと、同種雌株で訪花昆虫が確認されないことから、アカメガシワではキムネクマバチが飛散させた花粉によって授粉される可能性が高いと推測された.このため、振動空輸授粉(buzz and airborne pollination)と名付けたこの仮説的な授粉様式の可能性を、熱帯に多い雌雄異株木本植物の授粉様式と対比させながら考察し、訪花活動に関連したクマバチ属の進化過程についても若干推論した.