著者
橋本 和幸 田中 理恵 倉橋 朋子 上野 道子
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.5, pp.7-18, 2011

20世紀半ばにその名前が登場した芸術療法の技法は多様であるが、その中に粘土を用いた造形活動もある。粘土は立体的な表現が可能で、可塑性が高い、多くの人が幼児期に使ったことがあるなどの特徴を生かした利用をされている。本研究では、このような粘土造形を行った際の心理状態を数量的データにより調査することを目的とする。そのために、一般大学生40名を対象に粘土造形を試行させて、粘土に触った感想と制作物の題名を調査した。結果は、感想からは「手触り」や「素材の特徴」など10個のカテゴリ、作品の題目からは「動物」や「キャラクター」など7個のカテゴリが得られた。この結果から、粘土を扱うとその手触りから退行が促進され、癒しの効果が得られることが明らかになった。そして、粘土を触った感想は、思考、感覚、感情という3つのレベルから考えられることも分かった。また、柔らかさを中心に手触りについての感想が多かった。さらに、粘土の使用はコミュニケーションツールにもなると考えられ、グループワークへの活用も期待できる。