著者
佐々木 久長 備前 由紀子 SASAKI Hisanaga BIZEN Yukiko
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.129-136, 2014-10-31

大学生を対象に, 希死念慮・許容度・理解度によって二次元レジリエンス要因尺度得点に違いがあるかを明らかにするために質問紙調査を行った. 対象は大学生285名 (男性174名, 61.1%), 平均年齢18.6歳であった. 「死んだ方が楽になれる」 「死んだ方が家族のためになる」 「自殺したいと思った」 に全て 「無かった」 と回答した者は 「最近一ヶ月」 では89.5%, 「今までの人生」 では51.2%であった. 全て無かったと回答した者を 「希死念慮無群」, それ以外を 「希死念慮有群」 とし, 二次元レジリエンス要因尺度得点を比較した. その結果希死念慮有群は有意に二次元レジリエンス要因尺度得点が低かった. 獲得的レジリエンス要因の 「自己理解」 と 「他者心理理解」 の得点が希死念慮有群で有意に低かったことから, これらを高める対応によって大学生の自殺念慮を低下させる可能性が示唆された. 自殺に対する許容度では若い人, 高齢者ともに, また理解度では若い人にのみ資質的レジリエンス要因との関連が推察された.
著者
備前 由紀子 佐々木 久長 BIZEN Yukiko SASAKI Hisanaga
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.53-65, 2016-03-31

本研究は, 高齢者の希死念慮とレジリエンスの関連を明らかにし, 高齢者の自殺予防のあり方を検討することを目的とした.秋田県A市の60歳以上の住民954人を対象とし, 健康推進員に調査対象への調査票配布を依頼した. 回収は対象者から直接郵送法とした. 調査内容は二次元レジリエンス要因尺度, 過去(最近1ヶ月間を除く) と最近1ヶ月間のそれぞれの希死念慮の有無, 抑うつ度(K6), 情緒的サポートである.その結果, 希死念慮の有無による二次元レジリエンス要因尺度得点の比較では, 過去あり群と最近あり群のそれぞれにおいて, 「資質的レジリエンス要因」の4つの下位因子全てとその合計点, 「獲得的レジリエンス要因」の下位因子「問題解決思考」「自己理解」とその合計点で過去なし群と最近なし群が有意に高かった. 過去と最近の希死念慮の有無をクロス集計したところ, 過去あり群の60.7%が最近あり群であり, 過去なし群の99.4%が最近なし群であった. 過去に希死念慮を抱いた人は再び抱きやすく, 過去に希死念慮を抱いたことのない人は, その後も抱くことがほとんどない傾向にあった.これらの結果から, 高齢者に対してレジリエンスに注目した自殺予防対策の可能性があること, 過去に希死念慮があった人を対象に自殺予防対策を行うことが効果的であることが示唆された.