著者
佐々木 久長 備前 由紀子 SASAKI Hisanaga BIZEN Yukiko
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.129-136, 2014-10-31

大学生を対象に, 希死念慮・許容度・理解度によって二次元レジリエンス要因尺度得点に違いがあるかを明らかにするために質問紙調査を行った. 対象は大学生285名 (男性174名, 61.1%), 平均年齢18.6歳であった. 「死んだ方が楽になれる」 「死んだ方が家族のためになる」 「自殺したいと思った」 に全て 「無かった」 と回答した者は 「最近一ヶ月」 では89.5%, 「今までの人生」 では51.2%であった. 全て無かったと回答した者を 「希死念慮無群」, それ以外を 「希死念慮有群」 とし, 二次元レジリエンス要因尺度得点を比較した. その結果希死念慮有群は有意に二次元レジリエンス要因尺度得点が低かった. 獲得的レジリエンス要因の 「自己理解」 と 「他者心理理解」 の得点が希死念慮有群で有意に低かったことから, これらを高める対応によって大学生の自殺念慮を低下させる可能性が示唆された. 自殺に対する許容度では若い人, 高齢者ともに, また理解度では若い人にのみ資質的レジリエンス要因との関連が推察された.
著者
近藤 桃子 篠原 ひとみ Kondo Momoko Shinohara Hitomi
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.21-29, 2020-10-31

目的:三陰交への灸刺激が,女子大学生の月経随伴症状,体温および自律神経活動に及ぼす効果を明らかにする.方法:31名の女子大学生を対象に,月経終了後から次回の月経終了日まで約一か月間,三陰交への灸刺激を各自で行ってもらった.灸刺激前後の黄体期,卵胞期に修正MSQ スコア,月経痛,体温,自律神経活動値(心拍変動解析)を測定した.結果:灸刺激後,黄体期の月経随伴症状は軽減した(p=0.025).修正MDQ スコア下位項目では,黄体期の「痛み(p=0.0016)」「行動の変化(p=0.044)」「否定的感情(p=0.037)」「PMS 症状(p=0.025)」スコアが有意に下降し,「気分の高揚」スコアが有意に上昇した(p=0.025).また,月経痛のスコアは有意に減少した(p=0.005).灸刺激後,黄体期の足部深部温は有意に上昇し(p=0.047),自律神経活動は黄体期に,HF の有意な低下(p=0.029)とLF/HF の有意な上昇(p=0.044)がみられた.結論:三陰交への灸刺激は若年女性の足部の体温を上昇させ,月経随伴症状や月経痛を軽減させることが示唆された.また,灸刺激は副交感神経活動の低下と交感神経活動の上昇を促す可能性がある.Purpose: This study aimed to clarify the changes in menstruation-associated symptoms, temperature, and autonomic nervous activity after moxibustion in Sp6.Methods: Thirty-one female college students underwent moxibustion in Sp6 during the period from the last day of menstruation to the beginning day of the next menstruation, and their menstruation-associated symptoms (modified MDQ score), body temperature (sole and abdominal), and autonomic nervous activity (measures from heart rate variability), during the luteal and follicular phases were assessed.Result: After performing moxibustion, the modified MDQ score during the luteal phase decreased (p=0.025). Among the nine factors of the modified MDQ score, significant reductions were observed in the scores for "pain (p=0.0016)", "change in behavior (p=0.044)", "negative feelings (p=0.037)" and "PMS symptoms (p=0.025)", However a significant increase in the "arousal" score was observed(p=0.025). The menstrual colic score also significantly decreased (p=0.005). The temperature of the deep part of the foot significantly increased after moxibustion (p=0. 047). Concerningautonomic nervous activity, a significant decrease in HF (p=0.029) and increase in LF/HF (p=0.044) were observed in the luteal phase.Conclusion: The present findings suggest that the moxibustion in Sp6 increases the foot’s temperature and reduces menstruation-associated symptoms. Moxibustion in Sp6 may decrease parasympathetic nerve activity and increase sympathetic nerve activity.
著者
木元 裕介 進藤 伸一 KIMOTO Yusuke SHINDO Shinichi
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.127-133, 2011-10-01

【目的】ハムストリングスに対するスタティックストレッチング(以後, ストレッチング) 施行後の筋力と関節可動域の時間的変化を検討した.【方法】同意を得た16名を対象にストレッチングは30秒間を3回施行した. 測定は膝関節屈曲筋力と膝関節伸展関節可動域をストレッチング前, ストレッチング直後, ストレッチング後5分, 10分, 15分に測定した. また,ストレッチングをしない場合の測定も行った.【結果】筋力はストレッチング直後に有意に減少し, ストレッチング後5分に元に戻っていた. 関節可動域はストレッチング直後に有意に増加し, 10分後に元に戻っていた.【考察】近年の研究によりストレッチングは筋力を低下させると報告されており, 本研究でも筋力の低下がみられた.しかし, その低下は一時的で短時間なものだった. また, ストレッチングによって変化した筋力と関節可動域が元に戻る時間にずれがあることがわかった.
著者
新山 喜嗣 Niiyama Yoshitsugu
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.21-32, 2018-10-31

自分は死によって,「完全な非在」となるのか,それとも,「不完全な非在」として残存するかを論点とした.始めに,仮に自分の死が完全な非在になるとしたとき,自分の死を意味する「私はいない」という本来は語用論的に誤りとなるべき語りが,いかにしてわれわれの日常会話の中で成立しうるのかを検討した.この過程において,カプグラ症候群がもつ臨床的特徴から,二人称には 「このもの性」を持つときと持たないときの二重性があることを確認した.この二重性は,一人称としての語りである 「私はいない」という語りが,あたかも成立するかのような錯覚をもたらすことになる.結局,「私はいない」という語りは錯覚としてしか成立しえず,自分の完全な非在は実のところ二人称の他者の死を意味するものである.次に,自分の死が不完全な非在であるとしたとき,そのような不完全な非在が,他者の死としての他の不完全な非在と融合せずに,独立して存在できるか否かを検討した.この過程において,ドッペルゲンガーが持つ臨床的特徴から,存在者の同一性は原始的な原理であることを確認した.このことから,自分の不完全な非在は,生あるときの単独性を持つ自分と同一性という原始的な原理で連結し,結局,自分の不完全な非在にも単独性という性質がもたらされることになる.よって,自分の死が不完全な非在であるとしたとき,その自分の 不完全な非在は,死後も独立した個別者として存続することになる.Is death“complete non-existence”or“incomplete non-existence”? First of all, assuming my own death will be“complete non-existence”, the utterance“that I am not”would be an error from the perspective of pragmatics. In everyday conversation, however, this seems as if it were not a mistake. Let us examine why. In this process, from the viewpoint of the clinical features of Capgras syndrome, the second person has duality; in other words, there are two cases—one where the second person has“haecceity”and one where the second person does not have“haecceity”. This duality creates the illusion that the utterance“that I am not”is established. Ultimately, the utterance“that I am not”cannot be established, and “complete non-existence”in fact means not my own death but the deaths of others. Next, let us assume that my own death will be“incomplete non-existence”. At that time, could the“incomplete nonexistence”of my own death exist independently without fusing with the“incomplete non-existence”of others’deaths? In this process, from the viewpoint of the clinical features of Doppelgänger syndrome, the identity of the existence is confirmed as a fundamental principle. From this, my“incomplete non-existence”would link with my living“uniqueness”by the fundamental principle of identity and this identity brings the property of“uniqueness”to“incomplete nonexistence”. Therefore, my“incomplete non-existence”will continue to be a full independent existence after death.
著者
備前 由紀子 佐々木 久長 BIZEN Yukiko SASAKI Hisanaga
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.53-65, 2016-03-31

本研究は, 高齢者の希死念慮とレジリエンスの関連を明らかにし, 高齢者の自殺予防のあり方を検討することを目的とした.秋田県A市の60歳以上の住民954人を対象とし, 健康推進員に調査対象への調査票配布を依頼した. 回収は対象者から直接郵送法とした. 調査内容は二次元レジリエンス要因尺度, 過去(最近1ヶ月間を除く) と最近1ヶ月間のそれぞれの希死念慮の有無, 抑うつ度(K6), 情緒的サポートである.その結果, 希死念慮の有無による二次元レジリエンス要因尺度得点の比較では, 過去あり群と最近あり群のそれぞれにおいて, 「資質的レジリエンス要因」の4つの下位因子全てとその合計点, 「獲得的レジリエンス要因」の下位因子「問題解決思考」「自己理解」とその合計点で過去なし群と最近なし群が有意に高かった. 過去と最近の希死念慮の有無をクロス集計したところ, 過去あり群の60.7%が最近あり群であり, 過去なし群の99.4%が最近なし群であった. 過去に希死念慮を抱いた人は再び抱きやすく, 過去に希死念慮を抱いたことのない人は, その後も抱くことがほとんどない傾向にあった.これらの結果から, 高齢者に対してレジリエンスに注目した自殺予防対策の可能性があること, 過去に希死念慮があった人を対象に自殺予防対策を行うことが効果的であることが示唆された.
著者
横江 美那子 中尾 教伸 比江島 欣愼 Yokoe Minako Nakao Michinobu Hiezima Yoshimitsu
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.25-36, 2022-03-31

背景:超高齢社会を迎えた日本における持続可能な介護の実現に向けて,介護従事者の仕事への満足度ややりがいの 確保と介護サービスの品質向上はどちらも取り組むべき課題と考えられる.目的:介護施設における職員の職場環境に対する認識と入居者の心身状態との関連性を明らかにする.方法:特定入居者生活介護の指定を受ける有料老人ホーム277施設を対象に縦断研究を行った.職員の職場環境に対する調査結果と雇用形態や資格等の職員情報,入居者の介護度等の心身状態と転倒事故・褥瘡の発生報告状況につい て,施設別に集計されたデータを取得し,職員情報と入居者の状態変化の関係について単回帰分析またはロジスティッ ク回帰分析を行った.結果:介護職の職場環境に対する認識が良いほど褥瘡発生報告がされやすく(回帰係数1.42,p =0.0102),看護職の 職場環境に対する認識が良いほど状態変化を伴う転倒事故報告率(回帰係数-0.03,p =0.0318)が低かった.職場 環境に関する調査結果と入居者の心身状態変化との関連は認められなかった.結論:職員の職場環境に対する認識は,入居者の褥瘡や転倒事故の発生報告状況と関連していた.
著者
雄鹿 賢哉 新山 喜嗣 OGA Kenya NIIYAMA Yoshitsugu
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.129-137, 2015-10-31

統合失調症患者へ音楽活動を提供するにあたり, 「生演奏」と「録音演奏」との間での音楽聴取形態の違いに着目し, 「生演奏」によって, ノンバーバルな水準での治療者と患者の間での相互交流が形成されるか否かを検討した.対象は, 精神科病棟に入院中で, 本研究の目的と方法を説明した上で同意・署名を得られた, 明らかに認知機能障害や精神遅滞を有さない統合失調症患者53名とした.音楽形態における生演奏(セラピストによるエレクトーン演奏) と録音演奏(エレクトーン演奏を同装置から再生)との間の比較を主眼とし, 同じ3曲15分間を, それぞれの音楽形態で聴取した. 評価指標は, 心理状態の測定として気分調査票The Mood Inventory (以下MOOD) を行った.生演奏聴取前後を比較した結果, 生演奏聴取後の「爽快感」と, 「くつろいだ気分だ」の項目に有意な改善が得られた(P<0.01, 0.05). また生演奏では, 対象者が演奏のたびに拍手や声援をセラピストに送る様子が見られた. この結果から, 精神科作業療法における音楽活動を実践する際には, 生演奏はバーバルな水準での関与が困難な患者に対しても有効な, 治療導入時の手段やセラピストと患者間の関係作りとなりえる可能性があり, さらには外部からの感覚入力の手段としても有効であることが推測された.
著者
長澤 可愛 石井 奈智子 藤井 沙織 湯浅 孝男 NAGASAWA Kaai ISHII Nachiko FUJII Saori YUASA Takao
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.139-144, 2015-10-31

本研究は, 統合失調症患者のリズム同期能力の関連要因を検討することを目的とし, リズム同期能力, 認知機能,および社会機能の評価を行った. 対象者は25名であった. リズム同期能力は, 打楽器を使用した簡易的なリズムテスト, 認知機能は統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J) の数字順列課題と符号課題, 社会機能については精神科リハビリテーション行動評価尺度(REHAB) で評定した. その結果, リズム同期能力とワーキング・メモリに相関が認められた. また, リズム同期能力と社会機能の関連について, リズム同期能力が低いと社会機能が低かった. 以上の結果より, 統合失調症患者のリズム同期能力は, ワーキング・メモリ, そして社会機能が関連していることが示唆された.
著者
伊藤 登茂子 浅沼 義博 白川 秀子 久米 真 ITO Tomoko ASANUMA Yoshihiro SHIRAKAWA Hideko KUME Makoto
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.29-36, 2009-10-01

膵癌の治療成績は不良であり, 現在においても, 膵頭部癌切除例の生存期間の中央値は12.3ヶ月, 5年生存率は13.0%と低値である. 浸潤性膵管癌は膵癌の大多数を占めるものであるが, 同診断により手術を受けたのち, 19年が経過したサバイバーに, 病気との向き合い方についてインタビューする機会を得た.1) 疾病の理解, 2) 病気に対する自分自身の構え, 3) 病気への対処行動と予防行動について, その語りを健康生成論的視点で分析したところ, 首尾一貫して健康のベクトルを健康軸に向けるよう, 自分はこれでは死なないと信じて, 病名告知がない状況で自ら文献を調べて疾患を理解し, 回復手段を考え, 便秘やガス貯留が無いように代替療法を取り入れるなど, 主体的かつ積極的に過ごしてきたことが分かった. また, 入院中の生活で感じたさまざまな不合理や, 職業的背景や価値観を尊重した対応がされなかった際に感じた疎外感については, 今後のケアで留意すべき示唆となった.\nThe prognosis of invasive ductal pancreatic cancer is not satisfactory even at present. The median survival is reportedly 12.3 months, and 5 year survival rate is as low as 13.0% in patients who underwent pancreatoduodenectomy.We interviewed a pancreatic cancer patient who survived for more than 19 years following pancreatoduodenectomy, with regard to the way he coped with the disease. We have analyzed the interviewfrom a salutogenic standpoint such as 1) understanding of the disease, 2) his own preparedness, 3) manageability and preventive approach to the disease.As the result, we realized that he maintained a proactive and positive attitude : he had a strong sense of coherence to maintain his health, he believed that he would not die from the disease, he examined the literature to comprehend the disease (since informed consent had not been achieved sufficiently in those days), and he managed constipation and abdominal distension well by resistance training, special supplements and devised abdominal massage. Furthermore, he sometimes felt irrational and alienated during his hospitalization, because his value judgment fostered through his long career of journalist was not respected during his treatment. This should be given consideration in future.
著者
保坂 幸毅 松橋 絵里 伊藤 清香 久米 愛 金城 正治
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.110-119, 2010

脳卒中片麻痺患者の片手片足での車いす駆動は、体幹前傾での駆動が望ましいとされている。しかし、体幹の傾きが片足駆動における駆動特性にどのような影響を与えるかは明らかにされていない。そこで、体幹の傾きを変化させた時の片足駆動を運動学的・運動力学的に解析し、駆動特性を明らかにするために、体幹の傾きを前傾位・中間位・後傾位に設定し、車いすの片足駆動を行った。その時の初回駆動のビデオ撮影、下肢・体幹の表面筋電図と足圧の計測と10mの直進・スラロームの駆動時間の測定、駆動後のVisual Analog Scale(以下、VAS)に主観的評価も加え、体幹の傾きによる片足駆動の違いを比較検討した。 対象者は、高次脳機能障害や認知症が動作遂行能力を妨げておらず、FIMの歩行・車いすの項目で自立となっている脳卒中片麻痺者8名とした。 初回駆動時間は中間位に比べ、前傾位で有意に短かった。%EMGでは腹直筋は前傾位、脊柱起立筋は後傾位で有意に大きかった。また、下肢の筋は後傾位で大きい傾向にあった。単位時間・体重あたりの足圧は後傾位で有意に値が小さかった。10mの直進駆動では後傾位に比較し、中間位で有意に速かった。スラローム駆動では後傾位に比較し、前傾位・中間位で有意に速かった。VASでは後傾位で駆動しにくい傾向にあり、前傾位では怖さを感じていた。 この結果から前傾位・中間位で効率がよく、対象者の心理面を考慮すると中間位での駆動が最も安定することが示唆された。This study kinematically and kinetically analyzed propulsion with one foot while changing the inclination of the trunk. The study had subjects propel a wheelchair with one foot while adopting either a forward-leaning posture, an upright posture, or a backward- leaning posture in order to reveal propulsion characteristics. During this activity, initial propulsion was captured on video, surface electromyography of the leg and trunk was performed, foot pressure was measured, propulsion time on a 10-m long straight course and slalom was measured, and propulsion was subjectively assessed afterwards using the Visual Analogue Scale(VAS). These indices were used to compare and study differences as a result of trunk inclination. The subjects were eight individuals with hemiplegia due to stroke.Initial propulsion took significantly less time with a forward-leaning posture than with an upright posture. The %EMG activity of the rectus abdominis was significantly greater with a forward-leaning posture while that of the erector spinae muscles was significantly greater with a backward-leaning posture. In addition, the %EMG activity of the leg muscles tended to be greater with a backward-leaning posture. Foot pressure per unit time and body weight was significantly lower a backward-leaning posture. Propulsion on the straight course was significantly faster with an upright posture than with a backward-leaning posture. Propulsion on the slalom course was significantly faster with a forward-leaning posture or an upright posture than with a backward-leaning posture. VAS scores indicated that propulsion was more difficult with a backward-leaning posture, and subjects mentioned fear of falling when in a forward-leaning posture.The current results suggest that propulsion is more efficient in a forward-leaning posture or an upright posture and that propulsion is most consistent when the subject is in an upright posture given the subject's mental state.
著者
新山 喜嗣 NIIYAMA Yoshitsugu
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.1-13, 2016-10-31

地球上に生命が誕生してから37億年になるが, 実のところその半分以上を占める20億年の間は生物の死は絶対的なものではなかった. 生物に寿命としての絶対的な死が伴うようになったのは, 生物が原核生物から真核生物に進化してからのこの17億年間のことである. この絶対的な死をもたらす要因の一つに, ヘイフリック限界の名で呼ばれる細胞分裂の回数制限がある. さらに, 生物は加齢に伴って生存に不適切な細胞が増えるが, そのような細胞はアポトーシスと呼ばれるメカニズムによって秩序正しく除去される. このように, 生物には身体の内部に積極的に死をもたらす仕組みがあるが, 一定の期間を越えて個体が生存しないことが種の存続という点では有利であることから, そのような生物種のみが現在まで地球上に残っているのかもしれない. しかし, 将来には予想外の科学技術の進歩によって,生存期間に制限がない生物種が存在しても種の存続に不都合が生じない可能性がある. もっとも, 現代の宇宙物理学が示すところでは, 生物の身体を構成する原子が宇宙に存在できるのも永遠ではない. このことからすれば, 自然科学の中で生命を捉える限り, 「永遠の生命」はあくまで相対的なものとなる.