著者
佐々木 久長
出版者
聖霊女子短期大学
雑誌
聖霊女子短期大学紀要 (ISSN:0286844X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.32-39, 1994-03-31

本研究の目的は,家族における接触の程度が子どもの性格形成に影響を与えるという仮説を実証することと,実際にどのような関係があるのかということについて明らかにすることにあった。この目的のために,三世代同居家族の245名の小学生を対象に,1)性格特性について,2)家族への親和度について,そして3)13場面における接触の実際について,という項目について調査した。その結果,よく接触している群とそうでない群との間には,性格特性や家族への親和の程度において差が見られたことから,接触の程度が子どもの性格形成に影響を与えることが実証された。
著者
佐々木 久長 備前 由紀子 SASAKI Hisanaga BIZEN Yukiko
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.129-136, 2014-10-31

大学生を対象に, 希死念慮・許容度・理解度によって二次元レジリエンス要因尺度得点に違いがあるかを明らかにするために質問紙調査を行った. 対象は大学生285名 (男性174名, 61.1%), 平均年齢18.6歳であった. 「死んだ方が楽になれる」 「死んだ方が家族のためになる」 「自殺したいと思った」 に全て 「無かった」 と回答した者は 「最近一ヶ月」 では89.5%, 「今までの人生」 では51.2%であった. 全て無かったと回答した者を 「希死念慮無群」, それ以外を 「希死念慮有群」 とし, 二次元レジリエンス要因尺度得点を比較した. その結果希死念慮有群は有意に二次元レジリエンス要因尺度得点が低かった. 獲得的レジリエンス要因の 「自己理解」 と 「他者心理理解」 の得点が希死念慮有群で有意に低かったことから, これらを高める対応によって大学生の自殺念慮を低下させる可能性が示唆された. 自殺に対する許容度では若い人, 高齢者ともに, また理解度では若い人にのみ資質的レジリエンス要因との関連が推察された.
著者
備前 由紀子 佐々木 久長 BIZEN Yukiko SASAKI Hisanaga
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.53-65, 2016-03-31

本研究は, 高齢者の希死念慮とレジリエンスの関連を明らかにし, 高齢者の自殺予防のあり方を検討することを目的とした.秋田県A市の60歳以上の住民954人を対象とし, 健康推進員に調査対象への調査票配布を依頼した. 回収は対象者から直接郵送法とした. 調査内容は二次元レジリエンス要因尺度, 過去(最近1ヶ月間を除く) と最近1ヶ月間のそれぞれの希死念慮の有無, 抑うつ度(K6), 情緒的サポートである.その結果, 希死念慮の有無による二次元レジリエンス要因尺度得点の比較では, 過去あり群と最近あり群のそれぞれにおいて, 「資質的レジリエンス要因」の4つの下位因子全てとその合計点, 「獲得的レジリエンス要因」の下位因子「問題解決思考」「自己理解」とその合計点で過去なし群と最近なし群が有意に高かった. 過去と最近の希死念慮の有無をクロス集計したところ, 過去あり群の60.7%が最近あり群であり, 過去なし群の99.4%が最近なし群であった. 過去に希死念慮を抱いた人は再び抱きやすく, 過去に希死念慮を抱いたことのない人は, その後も抱くことがほとんどない傾向にあった.これらの結果から, 高齢者に対してレジリエンスに注目した自殺予防対策の可能性があること, 過去に希死念慮があった人を対象に自殺予防対策を行うことが効果的であることが示唆された.
著者
藤田 幸司 本橋 豊 金子 善博 佐々木 久長
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、ヘルスプロモーションの手法であるコミュニティ・エンパワメントの自殺予防対策における有効性を検討するために実施した。積極的な社会参加を促す地域づくり型の介入プログラムを実施した。前後に実施した悉皆調査の結果、コミュニティ・エンパワメントを実施した地域の認知的ソーシャル・キャピタルの向上が認められた。高齢者においては、コミュニティ・エンパワメントによる積極的な社会参加と住民同士の信頼を高める地域づくり型プログラムの実施は、地域のソーシャル・キャピタルを醸成させ、地域力を向上させる可能性が示唆された。
著者
本橋 豊 金子 善博 佐々木 久長 藤田 幸司
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

社会格差が自殺に及ぼす影響について、1)無職者の自殺の実態に関する統計学的解析研究、2)域自殺対策緊急強化基金の効果に関する研究(都道府県別の自殺率格差に影響を及ぼす要因)、3)域住民を対象としたソーシャル・キャピタルと心理的ストレスの関連性に関する研究(食事への配慮と教育歴に注目して)、4)東日本大震災被災地住民の地域の絆づくり支援と心の健康に関する研究、について検証した。無職者の自殺率ほど高率だった。基金の効果は自殺対策の先進地域の東北地方で大きかった。また、ソーシャル・キャピタルは心理的ストレスと有意に関連し、地域の絆を重視した自殺対策が重要と考えられた。
著者
本橋 豊 金子 善博 三好 美生 佐々木 久長
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

秋田県H町に在住する30歳以上の地域住民2287名を対象に、基本的属性、抑うつ度(自己評価うつ病尺度)、家族や地域の支援度、家族に関連する精神的ストレス、ストレス対処行動、心身の自覚的健康度、メンタルヘルスリテラシー(うつ病のモデル的症例を呈示し、病気の知識と対処方法を尋ねる)、医療への近接度、閉じこもり傾向、死にたいと思った経験の有無、自殺に関する態度、周囲の自殺者の有無、心の健康づくりに関する要望等からなる包括的な質問票を無記名・自記式にて実施した。うつ病について的確な知識を持っている人の割合は若い人ほど高く、60歳を境にその割合が低下することが示された。以上より、メンタルヘルスリテラシーが不足しているのは、中高年であり、中高年に対するメンタルヘルスに関する健康教育に必要性が明らかになった。住民のメンタルヘルスデータをもとに、秋田県H町のメンタルヘルスの状態を地理情報システムを用いて解析し、抑うつ尺度得点やその関連要因の地理的分布を示した。抑うつ尺度得点やストレス度には地理的格差が認められ、地域保健対策を立案する上での優先順因の決定に地理情報の提供が効果的であった。地域保健担当者はこのような地理情報をもとに効果的な健康教育を推進することが可能になると考えられた。また、平成18年度より自殺予防の地域介入を開始する予定の能代市の地域自殺リスクを地理情報システムを用いて事前評価した。地域の自殺予防対策の介入を行う際に、どの地区に重点的な対策を講じるべきかを地理情報システムを活用した事前リスク評価により科学的に考慮することができることが判明した。本研究により、地域のメンタルヘルスリテラシーを測定するための標準化された手法が得られ、さらに地理情報システムを利用した統合的な地域診断システムが確立した。本研究の成果は地域の健康政策への応用が期待される。