著者
傳田 惠隆
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.173-183, 2015-08-01 (Released:2015-09-25)
参考文献数
31

山形県寒河江市高瀬山遺跡を対象に,出土した石器集中の攪乱要因について検討を行った.遺跡から出土した石器は最上川の氾濫による洪水ローム層中に挟まれていることから,出土した石器集中は少なくとも流水の作用を受けて形成されている可能性がある.石器が遺棄・廃棄されたのちの流水の影響の有無を検討するために,同一層から出土した石器と礫について分析を行った.分析方法は,礫と石器のファブリック解析,遺物サイズの空間分布,石器の表面状態である.その結果,遺跡から出土した礫と石器では,異なる傾向が現れた.礫は,流水などの複合的様相を受けて堆積していることがみられた.一方石器は,少なくとも14mm以上の分析対象に関しては流水の作用は受けているものの,遺棄・廃棄された位置を大きく変えるような再移動は認められなかった.