- 著者
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元井 沙織
- 出版者
- 目白大学
- 巻号頁・発行日
- 2021-03-25
本論文では,青年後期と成人初期を対象として,(1)片づけ行動が,どのような要因によって促進されるのかを明らかにすること,(2)片づけ行動には,どのような心理的効果があるのかを明らかにすることの2点を目的とした。これまでの先行研究から,片づけ行動とは単一の行動を指すのではなく,不要な物の処分や,必要な物を分類することなど,複数の作業を通じて,生活空間を整った状態にすることと考えられる。この処分・分類・整頓の3つの要件を網羅した尺度は,これまで作成されていなかった。そこで,本論文では,(1)と(2)を検討していくにあたり,片づけ行動を捉える尺度を作成した。初版の片づけ行動尺度は,処分・分類・整頓の3つの要件を網羅していたが,文章表現に関する問題(現代の生活環境において一般的言えない表現や複数の内容が含まれる項目がある)と妥当性の検討がされていないという問題があった。そこで,文章表現を修正した改訂版片づけ行動尺度を作成し,信頼性と妥当性の検討を行った(研究2)。Cronbachのαを算出し,十分な値が示されたことから,内的整合性の観点から信頼性が確認された。さらに,片づけに関連する概念である「溜め込み」傾向を測定する尺度Saving Inventory-Revised(SI-R)日本語版(土屋垣内他,2015)と部屋の散らかり状況を評定するClutter Image Rating(CIR)日本語版(土屋垣内他,2015)との関連から,収束的妥当性と増分妥当性が確認された。本尺度を用いて,片づけ行動を促す要因と片づけ行動の心理的効果の検討を行った。