著者
近藤 由佳里 大庭 智子 田中 智子 古賀 あゆみ 光吉 久美子 大塚 康代 野口 ゆかり 新小田 春美 平田 伸子 加耒 恒壽
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.518-529, 2005-01
被引用文献数
3

現在, 意図しない妊娠による結婚「できちゃった結婚」が増加している。妊娠, 結婚という2つの大きなライフイベントに同時に直面するため, 母性不安が大きく, 順調な母性発達過程からともすると逸脱しやすいのではないかと考えた。そこで今回, 「できちゃった結婚」妊婦の母性不安と母性発達の現状を明らかにするため, 計画妊娠初産婦と比較する研究調査を行った。期間は2003年9月〜12月。F市産婦人科5施設の初産婦319名を対象に自記式質問紙調査を行い, 以下のことが明らかとなった。(1)「できちゃった結婚」群は計画妊娠群より母性不安度が高く(p<0.001), 特に妊娠判明時「戸惑った, 困った」と答えた妊婦が, 有意に母性不安度が高かった(p<0.001)。(2)母性不安因子は, 「薬や喫煙の影響」「経済状態」「産後の体型の変化」「世間体」「育児」「母乳」「夫の思いやり」「夫の反応」「家族の反応」の9項目において, 「できちゃった結婚」群が有意に高かった。(3)母性の発達過程(母性意識, 愛着形成)については, 両群で有意な差はみられなかった。(4)母性不安度の高い人は母性意識が低く, 特に「できちゃった結婚」群において強い相関がみられた。(5)母性不安度が高い人は対児感情が低かった。