- 著者
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中野 淳一
渡會 由恵
光山 孝
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.C0611, 2008 (Released:2008-05-13)
【目的】 腰部と関わりの深い股関節の機能が腰痛に及ぼす影響を検討した報告は多く存在する。しかし、腰痛を悪化させる姿勢と股関節機能の関係を検討した報告は少ない。臨床では座位の持続で症状が悪化する腰痛患者は股関節の屈曲可動域が制限され、立位の持続で症状が悪化する患者は股関節の伸展可動域が制限されている印象を受ける。そこで腰痛を悪化させる姿勢の違いと股関節可動域の関係を調査・検討した。【方法】 対象は当法人職員41名(男性14名、女性27名、平均年齢27.8±7.3歳)。 対象の腰痛の有無を調べ、腰痛の訴えがあった場合は、さらに座位または立位の持続による腰痛出現・増強傾向の有無を確認し、腰痛無群、座位型腰痛群、立位型腰痛群の3群に分類した。座位・立位ともに腰痛の訴えがあった場合は、より症状を強く訴える型に分類した。分類できない腰痛者や下肢症状のある者は対象から除外した。 内訳は腰痛無群16名、座位型腰痛群12名、立位型腰痛群13名であった。 次に対象の股関節屈曲・下肢伸展挙上(以下:SLR)・股関節伸展・腹臥位膝屈曲可動域を計測した。結果は左右の平均値を腰痛無群、座位型腰痛群、立位型腰痛群の間で比較した。検定はt検定を用い、有意水準5%未満とした。【結果】 股関節屈曲可動域の平均値では腰痛無群95.3±7.2度、座位型腰痛群90.6±6.6度、立位型腰痛群97.3±8.7度であり、腰痛無群と座位型腰痛群、立位型腰痛群と座位型腰痛群の比較において有意差が認められた(p<0.05)。腰痛無群と立位型腰痛群の間では有意差は認められなかった。 SLR可動域の平均値では腰痛無群60.3±11.3度、座位型腰痛群49.6±11.1度、立位型腰痛群59.2±8.7度で、腰痛無群と座位型腰痛群(p<0.01)、立位型腰痛群と座位型腰痛群(p<0.05)の比較において有意差が認められた。腰痛無群と立位型腰痛群の間では有意差は認められなかった。 股関節伸展可動域の平均値では腰痛無群13.4±5.2度、座位型腰痛群16.3±5.1度、立位型腰痛群14.4±6.2度で、各群間で有意差は認められなかった。 腹臥位膝屈曲可動域の平均値では腰痛無群127.7±26.2度、座位型腰痛群133.3±15.8度、立位型腰痛群136.0±11.0度で、各群間で有意差は認められなかった。【考察】 座位型腰痛群は腰痛無群・立位型腰痛群と比べ、股関節屈曲可動域・SLR可動域に制限がみられた。よって座位型腰痛者は股関節屈曲制限やハムストリングスの伸張性低下の為、座位時に骨盤が後傾する傾向が強くなり、腰痛の動態に悪影響を及ぼすことが示唆された。 また、股関節伸展可動域・腹臥位膝屈曲可動域には各群間で有意差は認められず、立位型腰痛群に特異な傾向は示されなかった。このことより、立位姿勢は座位姿勢と比べ個々の違いが大きく、股関節可動域が立位型腰痛の動態に及ぼす影響に特定の傾向はないことが今回の研究から推測された。