著者
免田 賢
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.147-163, 2012-03-01

宮沢賢治は、日本を代表する詩人・童話作家である。なおかつ科学者、宗教家、そして行動実践者の側面をもっている。本論文では、賢治理解の枠組みを提示し、宮沢賢治についてこれまで報告された心理学研究について概観をおこなった。第二に賢治自身による世界理解の方法論がどのようなものであったか、諸アプローチから心理学的に検討をすることを目的にした。その上で、作品の「心象イメージ」について知覚・発達心理学、認知心理学、心理力動的な観点からの分析を試みた。さらに、賢治が生きていた時代に影響を受けた心理学者であるWilliam Jamesの影響についても考察をおこなった。賢治の作品にみる「心象イメージ」がプリミティブともいえる相貌的知覚によっていること、Jungをはじめとする精神分析の影響を受けていること、さらに賢治が本邦の心理学の発展と歩みをともにしていることが論じられた。最後に、今後の臨床心理学の発展に関連して、賢治研究の意義について展望を述べた。