著者
児山 俊行
出版者
大阪成蹊大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13489208)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.59-79, 2007

まず、イタリア産地分析では、「組織的知識創造」論に由来する「暗黙知」概念を、諸批判を踏まえ、言語化しうるものに限定すべきだとした。イタリア産地の競争優位は言語化できない暗黙的要因にあると言われるが、「暗黙知」概念や「形式知/暗黙知」の二分法は十分な分析ツールとなりえない。むしろ、生産上の「行為」そのものに焦点を当て、「知ること」と「作ること」を媒介し「行為」を生む根源を「直観の付随した構想力」とみるべきであり、それを分析フレームワークの中心をなすべきではないかと考えた。したがって、イタリア産地の諸特性を捉えきれない「暗黙知」概念は、イタリア産地の「生産能力」を「ラベル」として示すものに過ぎないと結論づけた。