著者
入江 康仁 新美 浩史
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.757-762, 2017-12-31 (Released:2017-12-31)
参考文献数
8

化膿性脊椎炎は一般的に臨床診断や画像診断が困難で,不明熱などとして見過ごされやすく再発率も高いことから,救急総合診療における重要な鑑別疾患の一つである。2015年度にMRI が診断に有用であった3例の化膿性脊椎炎を経験したため,早期診断におけるMRIの有用性について考察した。本疾患は血行性感染が多く,椎体内の動脈は軟骨終板直下で血管網を形成し,病原体が留まりやすく感染の好発部位である。そのため軟骨終板直下から感染が始まり,炎症は椎体から椎間板を経て隣接した椎体に波及し,やがて椎間板が狭小化する。そして前縦靭帯下,さらに靭帯を越えて進展し傍椎体膿瘍や蜂窩織炎を形成する。単純MRIは早期診断が可能であるが,症例2や3のような炎症初期では特異度は劣るため椎体や椎間板などに形状変化が現れる前の化膿性脊椎炎を診断することが困難である。しかし,造影MRIでは炎症初期でも感染巣に造影効果が得られるためより早期の診断に有用である。
著者
入江 康仁 中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.272-283, 2020 (Released:2021-09-28)
参考文献数
56
被引用文献数
1 3

世界的な流行を呈している新型コロナウイルスに対して,世界中でその対策が進められている。人工呼吸器や体外式膜型人工肺の導入が行われ,また抗ウイルス薬の投与なども試みられている。しかし,現在のような情勢の中で,エビデンスのある有効な治療を待つわけにもいかず,日々対応していかなくてはならないのもまた事実である。 抗ウイルス薬はもちろん,抗菌薬や人工呼吸器などの医療器具のなかったスペインかぜ流行当時,本邦の先人たちがどのような診療をしたのかを顧みることは大変参考になる。本稿はスペインかぜに対して漢方薬を駆使して患者を治療した事実と,現在明らかとなったスペインかぜの高病原性,抗ウイルス薬の作用機序と臨床エビデンスを示しながら,ウイルス感染症のパンデミックに対する対策の一つとして臨床上も比較的安全であり,副作用も少なく,自己免疫賦活作用による抗ウイルス作用を期待できる漢方薬の役割を提言するものである。