著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.177-183, 2013 (Released:2013-11-18)
参考文献数
22
被引用文献数
2

熱中症により有痛性筋痙攣をきたした5例に対して芍薬甘草湯を用いたところ,著明な改善をみたので報告する。熱中症の重症度はI 度が4例,III 度が1例であった。I 度の4例は来院時速やかに芍薬甘草湯を頓用することで症状の改善をみた。III 度の1例は芍薬甘草湯の頓服だけでは改善せず,定時の服用も追加し,完治まで4日間を要した。3例は横紋筋融解を合併していたが,芍薬甘草湯服用による有害事象はみられなかった。熱中症による有痛性筋痙攣では横紋筋融解から急性腎障害への進展を防止するためには筋痙攣を早急に抑制することが重要である。その治療として芍薬甘草湯は有用な治療になると考えられた。
著者
中永 士師明
出版者
特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会
雑誌
日本急性血液浄化学会雑誌 (ISSN:21851085)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.9-16, 2013-06-01 (Released:2022-09-16)
参考文献数
40

持続的腎機能代替療法(CRRT)施行症例の多くは敗血症や多臓器不全を合併しており,救命のためには栄養管理を含めた集学的治療が必要となる。また,CRRT施行中は抗凝固薬を使用することになるため,出血傾向を助長させることなく,また,過凝固にもならないような抗凝固能管理も必要となる。CRRT施行患者に対する栄養管理におけるエビデンスはほとんどなく,急性腎傷害(AKI)や敗血症に準じた栄養管理が推奨される。AKI患者では早期からの栄養管理が腎機能や予後の改善に繋がる。CRRTの利点は除水による輸液スペースの確保により,十分量の薬剤,栄養,血液製剤の投与が可能になる。欠点は薬剤やビタミンなどの栄養素が一部除去されてしまうため,投与量を調整する必要が生じることである。CRRT施行中の栄養管理としては,①underfeedingの許容,②早期から栄養管理を考慮し,カロリー摂取,蛋白摂取を正しく行う,③少量でも可能な限り経腸栄養を行う,の3点が重要となる。
著者
加藤 彩 中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.336-339, 2013 (Released:2014-05-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

繰り返す性器ヘルペスの治療には,抗ヘルペスウイルス薬の継続投与による再発抑制療法が行われているが,漢方薬による治療報告は散見される程度である。今回,繰り返す性器ヘルペスの再発に補中益気湯が奏効した症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。症例は,34歳女性,2回妊娠2回出産。数年前より性器ヘルペスの再発を繰り返し近医にて治療していたが,再発が頻回となり当科を初診した。再発所見の他,全身倦怠感,食欲低下などを自覚し,気虚と考え補中益気湯を7.5g/日投与開始した。服用後2週間で全身倦怠感は消失。徐々に再発回数は減少し一年弱で服用を中止したが,その後も再発は認めなかった。本症例は,全身倦怠感,食欲低下の改善ともに,性器ヘルペスの再発回数も減少していった。性器ヘルペス再発の状態を気虚と考え,補中益気湯で治療は可能と考えられた。
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.81-85, 2009 (Released:2009-06-17)
参考文献数
9
被引用文献数
4 6

[目的]トリカブトの塊根を湿熱処理したブシ末は四肢・体幹の冷えや痛みに用いられる。疼痛性疾患に対して漢方エキス剤に加えてブシ末を処方し,治療効果と安全性について検討した。[対象と方法]修治ブシ末を247例(男性94例,女性153例)に処方(1.5‐8.0g/日)し,4週間後の効果を判定した。効果判定にはVisual Analog Scale(VAS)を用いた。投与前に比べて4週間後のVASが50%以下であれば著効,51‐75%であれば有効,76%以上もしくは4週間以内に処方を変更した場合は無効と判定した。[結果]ブシ末に関して著効102例,有効84例,無効61例で,著効と有効を合わせると75.3%であった。副作用は3例(舌のしびれ,膀胱絞扼感,全身浮腫)に認められた(1.2%)。[結語]今回の検討では重篤な副作用は認められず,疼痛疾患に対して高齢者に対するブシ末の有効性と安全性を確認しえた。
著者
入江 康仁 中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.272-283, 2020 (Released:2021-09-28)
参考文献数
56
被引用文献数
1 3

世界的な流行を呈している新型コロナウイルスに対して,世界中でその対策が進められている。人工呼吸器や体外式膜型人工肺の導入が行われ,また抗ウイルス薬の投与なども試みられている。しかし,現在のような情勢の中で,エビデンスのある有効な治療を待つわけにもいかず,日々対応していかなくてはならないのもまた事実である。 抗ウイルス薬はもちろん,抗菌薬や人工呼吸器などの医療器具のなかったスペインかぜ流行当時,本邦の先人たちがどのような診療をしたのかを顧みることは大変参考になる。本稿はスペインかぜに対して漢方薬を駆使して患者を治療した事実と,現在明らかとなったスペインかぜの高病原性,抗ウイルス薬の作用機序と臨床エビデンスを示しながら,ウイルス感染症のパンデミックに対する対策の一つとして臨床上も比較的安全であり,副作用も少なく,自己免疫賦活作用による抗ウイルス作用を期待できる漢方薬の役割を提言するものである。
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.471-476, 2009 (Released:2010-01-13)
参考文献数
26
被引用文献数
4 5

芍薬甘草湯は筋弛緩目的に使用される漢方薬である。今回,破傷風の全身痙攣の緩和目的に芍薬甘草湯を併用した1例を経験した。患者は32歳の男性で,飼い犬に咬まれた咬傷から破傷風を発症した。全身痙攣に対してプロポフォールを投与し,芍薬甘草湯も併用したところ,プロポフォールを漸減することができた。持続勃起症,腹痛,振戦,不眠などが一過性にみられたが,芍薬甘草湯の服用を継続することで消失した。患者は後遺症なく第14病日に退院した。これまでに破傷風に芍薬甘草湯を使用した報告はないが,筋痙攣の制御や自律神経系過緊張の緩和を目標に使用できると思われた。
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.847-852, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
29
被引用文献数
12 10

治打撲一方を服用した場合の酸化ストレス度と抗酸化力を測定し,経時変化について検討した。健常人20例に治打撲一方7.5g/日を3日間服用させ,服用直前と服用72時間後に酸化ストレス度(d‐ROMsテスト)と抗酸化力(OXY吸着テスト)を測定した。酸化ストレス度について服用前後で有意な変化はみられなかった。一方,抗酸化力は服用直前と比べて服用後には有意に低下した(p=0.0290)。服用中に副作用のため,中断した症例はなく,肩こり・便通・打撲痛などの改善といった好反応は6例にみられた。特に好ましい反応がみられなかった14例については,服用後に治打撲一方は酸化ストレス度,抗酸化力ともに有意に低下させた(p=0.0279,p=0.0413)。治打撲一方は体内の抗酸化力を動員して病態改善に寄与する可能性が示唆された。
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.809-812, 2008 (Released:2009-05-15)
参考文献数
12
被引用文献数
5 4

修治ブシ末単独投与による組織血流量増加および温熱作用について検討を行った。健常人14例に対して修治ブシ末を3g/日を3日間処方した。服用直前,服用90分後,服用72時間後の3回,示指の皮膚温,組織血流量を測定した。皮膚温に関して,直前と90分後の間には有意差を認めなかったが,72時間後との間には有意差を認めた(p=0.0736,p=0.0219)。また,90分後と72時間後との間にも有意差を認めた(p=0.0253)。組織血流量に関して,直前と90分後の間には有意差を認めなかったが,72時間後との間には有意差を認めた(p=0.0736,p=0.0219)。90分後と72時間後との間には有意差を認めなかった(p=0.4074)。皮膚温と組織血流量との間には有意の相関関係が認められた(p=0.0052)。ヒトにおいて附子が組織血流量増加作用と温熱作用を発揮する可能性が示唆された。
著者
中永士師明
雑誌
外科
巻号頁・発行日
vol.58, pp.1901-1903, 1996
被引用文献数
3
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-18, 2010 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16
被引用文献数
3 4

2種類のブシ末製剤を単独で服用した場合の酸化ストレス度と抗酸化力を測定し,経時変化について検討した。健常人34例を2群に分けて2種類のブシ末製剤(TJ‐3022,TJ‐3023)3g/日を3日間服用し,服用直前,服用90分後,服用72時間後に酸化ストレス度(d‐ROMsテスト)と抗酸化力(OXY吸着テスト)を測定した。TJ‐3022群では酸化ストレス度と抗酸化力の有意な経時的変化はみられなかった。TJ‐3023群でも酸化ストレス度と抗酸化力の有意な経時的変化はみられなかった。附子服用量3g/日では酸化ストレスに影響を及ぼさないことが示唆された。
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.77-81, 2008 (Released:2008-07-23)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

大建中湯はイレウスの保存的治療法の一つとして現代医学に定着しつつある。今回救急受診した急性腹症3例に対して大建中湯を使用したので報告した。3例とも腹痛が強く,小腸ガスも認められたが,大建中湯の内服によって症状が改善し,入院することなく帰宅することができた。救急診療において機能性イレウスであれば積極的な大建中湯の投与により入院治療を回避できる可能性が示唆された。
著者
高桑 徹也 広井 悟 井上 義博 佐々木 盛光 中永 士師明 遠藤 重厚 星 秀逸
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.350-353, 1993-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

We report a case of myasthenia caused by a Mamushi (snake)[Agkistrodon halys Blomhoffi] bite. Electromyography revealed a marked increase in the amplitude of action potentials (waxing phenomenon) with fast rates of motor nerve stimulation and the response to tensilon was negative. This case indicates that Mamushi venoms contain a neurotoxin preventing the release of acetylcholine quanta from nerve terminals.