著者
和田 恒彦 全 英美 宮本 俊和
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.51-56, 2016 (Released:2020-05-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1

【目的】棒灸は治療家のみならず、セルフケアとしても用いられているが、火傷の過誤が報告されるなど、温度特性について把握しておく必要がある。棒灸の燃焼部からの高さ、経時的な温度変化、影響範囲について検討した。 【方法】4mm厚のシナベニア板上に置いた1mm厚のアメゴムシート上に熱電対(ST-50 理科工業)を燃焼部直下(0mm)、直下から外方3.75mm、7.5mm、15mm、30mm、45mmの6点に設置し、温度インターフェイス(E830 テクノセブン)を介してパソコンに温度データを取り込んだ。棒灸(温灸純艾條 カナケン)は、先端から熱電対までの高さを20、30、40、60、80、100mmと変えて10分間経時的に6回測定した。 【結果および考察】測定時の室温は24.5±2.5℃だった。測定点の平均最高温度は、高さ20mmでは44.1±4.7℃、30mmは38.5±2.6℃、40mmは36.2±4.5℃、60mmは29.4±2.9℃、80mmは26.8±2.3℃、100mmは25.6℃±3.1℃だった。高さの100mmの燃焼部からの水平距離では直下から3.75mmでは25.9±3.3℃、7.5mmは25.9±3.2℃、15mmは25.9±3.1、30mmは26.1±3.0℃、45mmは26.3±3.1℃だった。また、高さ20mmで直下と外方部の温度逆転が、260秒後に外方15mm、290秒後に7.5mm、310秒後に3.75mm、430秒後に30mm、600秒後に45mmとの間に見られた。灰による影響と思われる。 【結語】直下では燃焼部に近いほど最高温は高かったが、高さ100mmでは遠いほど温度が高く、経時的には水平距離と温度の関係の逆転もみられた。棒灸は燃焼部からの高さにより、上昇温度、刺激範囲を可変でき、術者が刺激を調節することができることが確認された。
著者
和田 恒彦 全 英美 宮本 俊和
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.65-71, 2017 (Released:2020-07-07)
参考文献数
9

【目的】間接灸は火傷の可能性もあり温度特性について把握しておく必要がある。しかし先行研究 では1秒未満の詳細な温度変化を検討したものは見受けられない。そこで台座灸、温筒灸、棒灸 の温度特性について検討した。 【方法】4㎜厚のシナベニア板上に置いた1㎜厚のアメゴムシート上に熱電対を施灸部位直下(0.00 ㎜)、直下から外方3.75㎜、7.50㎜、15.00㎜、30.00㎜、45.00㎜の6点に設置し、温度インターフェ イスを介してパーソナルコンピュータに温度データを取り込んだ。棒灸は、熱電対からの高さ20 ㎜と100㎜とした。0.55秒間隔で600秒間計測し、各灸6回測定した。 【結果および考察】平均最高温度は台座灸55.9±5.0℃、温筒灸64.3±3.3℃、棒灸の高さ20㎜は 51.2±4.7℃、 100㎜は30.1℃±3.3℃だった。最高温度までの時間は、 台座灸160.7秒、 温筒灸154.5秒、 棒灸の高さ20㎜は126.7秒、100㎜は182.5秒だった。台座灸の温度曲線は漸増的に温度上昇後、 頂点付近は弧を描き、なだらかに温度下降をした。温筒灸は、台座灸よりも急激に温度上昇し、 頂点付近で少しゆるやかになり頂点から急激に下降した。棒灸の高さ20㎜は、漸増後、頂点はゆ るやかな弧をえがき、非常になだらかに直線的に温度は下降、高さ100㎜は非常になだらかに温度 上昇し、直線的に推移した。台座灸、温筒灸では施灸部外方7.5㎜以遠ではほとんど温度上昇がな かった。台座灸では最高温度付近で急激な温度変化があることがわかった。各種間接灸を使い分 けることにより、異なる刺激を与えることができる可能性が示唆された。 【結語】高頻度の温度計測および施灸周囲の温度測定によりこれまで不明だった台座灸、温筒灸、 棒灸の温度特性をとらえることができた。