著者
兪 祖成
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.47-59, 2014-09

論説(Article)19世紀末期から、「滅私奉公」をイデオロギーとする革命政党と政治的集団主義の台頭を契機に、中国の伝統的な「公」観念は劇的に再編され、多様化・重層化していた「公」の世界は「一元化」、つまり「国家的公共性」へと集約されていった。紆余曲折を経て1949年に政権の奪取に成功した中国共産党は執政党になった直後、「国家的公共性」の基盤としての「国家権力」を構築し、「市民的公共性」の物質的基盤である市場経済を排除し、さらに「市民的公共性」の物理的基盤としての「公共空間」を解体するに至った。このような「国家的公共性」の形成に伴い、憲法上の結社の自由が形骸化され、そして整理・整頓を目的とする社団政策が強行されたことによって、1949年までに存在し続けた様々な社団は改造、取締、解散の憂き目に遭った一方で、新政権の維持や社団を通じた民衆掌握のため、「官製社団」が次々と作られた。さらに、新政権のもとで存続できた社団にしても、新設された「官製社団」にしても、すべて党の下部組織 (党組という)によって完全に支配されることとなった。かくして、文化大革命期間を除けば、1949年から1977年までの中国における非営利部門は、党・政府の意図を受けて公共サービスを提供していた反面、アドボカシー、価値の擁護、ソーシャル・キャピタルの醸成という社会的機能を果たすことがほぼ出来なくなった。一言でまとめるならば、「国家的公共性」の形成に伴って、1949年から1977年までの中国における社団を中心とする非営利部門は、結果として党・政府に従属せしめられたのである。