著者
桂 悠介 佐々木 美和 八木 景之
出版者
国立大学法人 大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター
雑誌
未来共創 (ISSN:24358010)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.177-207, 2021 (Released:2021-07-08)

本稿では、「フォーラム 共生/共創の多角的検討(1)違和感とフラストレーションを起点とした協同的オートエスノグラフィー」を受け、いかに「当事者」の声を聴き、向き合いうるかを論じる。 まず、共生や共創の前提となる「他者の声を聴く」際、聞き手が他者の「部分」だけではなく「全体」と向き合う姿勢をもつ必要があることを指摘する。次いで、当事者の「声を聴く」ための方法として、宗教的言説をめぐって当事者と非当事者が共に参画するハーバーマスの「協同翻訳」論に着目する。その上で、協同翻訳が宗教に限定されない共創の方法として応用しうることを論じる。 第三に、フォーラム1で表明された、現在の学術的な共生や共創が「当事者のため」のものになっていないのではないか、一定の基準により選抜された人々による「制度的優生思想」と呼びうるものではないかという違和感やフラストレーションに対して、リリアン・ハタノ・テルミの当事者の4F(Fact、Fear、Frustration、Fairness)理解の教育や竹内章郎の「能力の共同性」論を通した、より公共的な実践や議論への「翻訳」を試みる。最後に、協同翻訳をより積極的に行うための、「インリーチ」や熟議をめぐる議論を紹介する。