著者
小林 俊光 八木沼 裕司 末武 光子 高橋 由紀子
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.342-346, 1997-06-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
18

耳管閉鎖不全に基づく耳疾患には, 鼓膜に異常のない耳管開放症のほかに, 中耳真珠腫, 滲出性中耳炎, 中耳アテレクタシスなどがある。中耳真珠腫の25%に耳管閉鎖不全に基づく鼻すすり癖が誘因と考えられる症例が認められた。診断に当たっては, 耳管閉鎖不全の存在を疑うことが重要であり, とくに真珠腫では両側耳に病変のある弛緩部型真珠腫, 滲出性中耳炎では鼓膜内陥の強い貯留液の少ない症例においては, 鼻すすり癖の綿密な問診と鼻すすり時の鼓膜内陥また中耳腔陰圧形成の確認が必要である。治療に当たっては, 鼻すすり癖と病変の関係を患者に理解させることが, 再発防止に重要である。重症例では開放耳管に対する治療が主病変の治療とともに必要であり, 開放耳管の効果的治療法の開発が待望される。