著者
川崎 啓祐 蔵原 晃一 大城 由美 河内 修司 八板 弘樹 澤野 美由紀 森下 寿文 長末 智寛 阿部 洋文 渕上 忠彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1411-1419, 2015-10-25

要旨●患者は88歳,男性.主訴は下腹部痛.腹部造影CTにて腸閉塞と診断され入院加療となった.腸閉塞改善後の小腸X線造影検査では終末回腸に腸間膜付着対側を中心とする偏側性変形,偽憩室様変化を,小腸内視鏡検査では縦走から一部輪走する浅い潰瘍,狭小化を認めた.大腸内視鏡検査では盲腸には不整形の浅い潰瘍,回盲弁と上行結腸には輪状潰瘍を認めた.生検による病理組織学的検査,その他の培養,血液検査でも確定診断には至らなかったが,経口摂取後も腸閉塞症状を繰り返していたため回盲部切除術を施行した.病理組織学的所見は粘膜下層に存在する小型から中型の動脈周囲に,多核巨細胞を含む炎症細胞浸潤と肉芽腫様病変を認め,内弾性板の変性や断裂の所見も認められた.頭部症状がなく側頭動脈生検は施行していないが,年齢,赤沈値の亢進,巨細胞性動脈炎(GCA)に特徴的な病理組織像から,腸管に限局したnon-cranial GCAと診断した.GCAの消化管病変の報告は極めてまれであり,その特徴を明らかにするにはさらなる症例の蓄積に基づく検討を要する.
著者
河内 修司 蔵原 晃一 川崎 啓祐 大城 由美 高橋 郁雄 八板 弘樹 岡本 康治 永田 豊 澤野 美由紀 吉岡 翼 渕上 忠彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1318-1325, 2014-08-25

要旨 患者は26歳,男性.1歳時より難治性鉄欠乏性貧血,低蛋白血症を認め,18歳時に小腸型Crohn病と診断されていた.高度な貧血を認め,当センター入院となった.小腸X線造影検査では,中部小腸に非対称性の変形・狭窄が多発し,地図状のバリウム斑を認めた.小腸内視鏡検査では,ひだ集中を伴う境界明瞭な浅い類円形潰瘍,非同心円状の全周性潰瘍,斜走する潰瘍を認めた.小腸切除標本では,境界明瞭で平坦な輪走・斜走する地図状・テープ状の潰瘍が多発し,大部分がUl-IIまでの非特異的潰瘍または瘢痕であった.以上より,自験例は特徴的な臨床経過,X線造影・内視鏡所見,切除標本の肉眼・組織学的所見から非特異性多発性小腸潰瘍症と診断した.
著者
平田 敬 蔵原 晃一 大城 由美 八板 弘樹 浦岡 尚平 吉田 雄一朗 和智 博信 松塲 瞳 山元 英崇
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1103-1120, 2019-07-25

要旨●当科で病理組織学的に確定診断した十二指腸表在性上皮性腫瘍(NETを除く)52例54病変および腫瘍様病変18例18病変を対象として,その臨床的特徴を遡及的に検討した.上皮性腫瘍は粘液形質から腸型腫瘍17例17病変(腺腫15例,腺癌2例),胃腸混合型腫瘍8例8病変(腺腫5例,腺癌3例),胃型腫瘍27例29病変(腺腫12病変,NUMP 15病変,腺癌2病変)に分類された.腸型腫瘍および胃腸混合型腫瘍は25例中21例(84.0%)に白色化を伴っていた.胃型腫瘍の肉眼型はSMT様隆起が29病変中17病変(58.6%),0-I型が10病変(34.5%)であった.胃型腺腫およびNUMPの病変表面は過半数の症例で胃腺窩上皮様領域を面状に認めた.腫瘍様病変はBrunner腺過形成・過誤腫7例,腺窩上皮型過形成性ポリープ7例,Peutz-Jeghers型ポリープ4例が診断されていた.Brunner腺過形成・過誤腫7例中4例はSMT様の形態を呈し,5例は表層に胃腺窩上皮化生を伴っていた.十二指腸の内視鏡検査において,腸型腫瘍は白色化に着目することが病変の拾い上げに有用であるが,胃型腫瘍に関しては面状の胃腺窩上皮様領域を伴う孤在性の隆起に着目することが拾い上げ診断に有用な可能性がある.胃型腫瘍と胃型形質を呈する腫瘍様病変との内視鏡的鑑別は容易ではないが,ともに隆起の様相が目立つ病変が多いため術前生検による線維化の問題が少ないこと,加えて,術前生検の正診率も比較的高いことから,両者の鑑別には生検による病理組織学的な評価を組み合わせることが有用と考えた.