著者
佐藤 厚子 北宮 千秋 李 相潤 畠山 愛子 八重樫 裕幸 面澤 和子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.318-326, 2008 (Released:2014-07-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的 育児不安を「育児ノイローゼ,育児不安,育児ストレス,育児疲労,育児葛藤などを諸要因とした Child Rearing Burnout」として捉えた。4 か月健康診査時での訪問群(訪問指導を受けた母親)と非訪問群(訪問指導を受けなかった母親)の育児不安の実態を調査し,育児不安得点を比較することを目的とした。方法 対象者は H 市保健センターの 4 か月健康診査に来所した母親169人であり,自記式質問紙による調査を行った。調査用紙は受付けで配布し,健康診査終了後にその場で回収した。配布部数は196部であった。調査用紙配布の際に本研究の目的,意義他,研究によって得られた個人情報は研究以外の目的には使用されないこと,研究者以外の者がデータを用いることはないこと,アンケートの回答は任意であることを明確に記した文書を示し,口頭で説明した。同意が得られたものを対象者とした。結果 有効回答率は86.2%であり,訪問群は92人(54.4%)であった。アンケート結果を因子分析し,育児不安因子として 5 因子22項目を抽出した。各因子を次のように命名した。第 1 因子:「気分変化の因子」(気分変化)(7 項目)第 2 因子:「身体的疲労の因子」(身体疲労)(5 項目)第 3 因子:「家族関係の因子」(家族関係)(4 項目)第 4 因子:「子育てに関する不安・心配の因子」(子育て)(3 項目)第 5 因子:「人付き合いの因子」(人付き合い)(3 項目)。訪問群・非訪問群とも「育児の協力は夫であるか」の質問に「いいえ」と回答した対象者に「子育てに失敗するのではないかと思うことがある」,「この子がうまく育つかどうか不安になることがある」,「子供のことでどうしたらよいかわからないときがある」と答えたものが有意に多かった。育児不安項目と関連していた対象者の特性は,初産婦,拡大家族,無職,30才代以降の出産であった。訪問群と非訪問群では第 1 因子(気分変化),第 2 因子(身体疲労),第 4 因子(子育て)において有意差があり,訪問群の育児不安得点が高かった。結論 訪問群は非訪問群よりも育児不安得点が有意に高く,訪問指導時に Child Rearing Burnout の内容を把握することで,継続支援が必要な母親を把握できる可能性がある。