著者
櫛 泰典 六川 千秋
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6、7年度分人ABO血液型を司るのはO型糖鎖を前駆体としてA型の人ではA型糖鎖を作るα1-3ガラクトサミン転移酵素、B型の人ではB型糖鎖を作るα1-3ガラクトース転移酵素の存在が知られ、その存在の有無が大きく関連している。この研究は人の赤血球のAB型の人の型活性糖脂質を詳細に調べたことによって得られた結論を基にして細胞表面のA型糖鎖、B型糖鎖発現をAB型の人ではどのように調節されているのか解明するためのアプローチで、以下の点を平成7年度に解明することを目的として研究を行った。1。AB型の人ではA型合成酵素とB型合成酵素の両方が存在し、O型糖鎖を基質として糖鎖の伸長を行うが分岐したO型糖鎖にA型糖鎖とB型糖鎖が結合したハイブリッド型の糖鎖が存在しないのか?2。しないとすればA型合成酵素とB型合成酵素は基質に対して親和性が異なるのか?あるいはA型合成酵素の局在とB型合成酵素の局在がGolgiで異なるのか?3。また、基質となる分岐型のO型糖鎖がGolgiでどのように存在するのか?を中心に研究を行い、以下の結果を得た。1、AB型の人の赤血球を個別に集め、これより糖脂質を抽出し、型活性を調べ、既に200例を増やしても糖脂質としては各々分子上に型活性糖鎖が結合していることが確認された。より簡便にするためにα1-3ガラクトサミン特異的レクチン(HP)を用いて酵素分解との組み合せも上記の結果を支持した。また、ハイブリッド型の糖鎖が存在しないか確認するためにいくつかの特異的糖鎖分解酵素とその後の薄層クロマトグラフィーでの免疫染色を行った結果、その様なハイブリッド構造を持つ分子は存在しないことが明かにされた。血液型物質が多量に含まれる小腸や大腸についても同様の結果を示した。4、A型赤血球膜より抗A抗体に反応するガングリオシド構造を明かにするために大量のA型赤血球膜を集め、これを出発材料としてガングリオシドを抽出、精製を行った。イオン交換クロマトグラフィーによってモノシアロ、ジシアロ画分に分離を行い、更に、モノシアロ画分を分離し、抗A抗体により、免疫染色を行うS-Iの下に数本の陽性バンドが検出され、その完全構造を解析した結果、新規のA型エビトープを一方に持ち、もう一方にはシアル酸が有する構造と思われる。現在その完全構造を検討している。