著者
室伏 広治 山口 大輔
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

アスリートが高レベルのパフォーマンスを維持するためには、怪我なく長期間トレーニングを継続することが重要である。負荷の高いトレーニングを長時間続ける事により負傷につながるため、多くのエリートアスリートが現役を続けることが困難となる。申請者は、現役時代に腰や股関節などの負傷による困難を打開するため、「ハンマロビクスエクササイズ」を考案し, 負傷部位への過度な負担なくトレーニングの継続が可能となり、38歳でオリンピック銅メダルを獲得できた。本研究では表面筋電、3次元動作解析、フォースプレートを用いてハンマロビクスエクササイズの運動特徴を解明し、アスリートの傷害予防への効果を検討する。
著者
熊谷 貴 大田 伸生
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アジアで流行する日本住血吸虫は、その宿主である哺乳類の門脈系の血管内に寄生し、赤血球を摂取することで生殖活動を行っている。今回、住血吸虫の免疫回避と性成熟における寄生システムについて、細胞外小胞に着目した。細胞外小胞とは、生物に広く見られる生体モバイル粒子である。今回、この細胞外小胞が日本住血吸虫より分泌していることを明らかにした。さらに、この小胞は、雌雄がペアになった時、赤血球を摂取した時に分泌が増加することも分かった。また小胞内には多量のmiRNAが含まれており、雌雄での相互遺伝子調整を行っていると考えられた。また、この小胞は宿主のTh1サイトカインを抑制する働きを持つことも見出した。
著者
小西 聖子 小西 聖子 山上 皓
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

触法精神障害者の処遇についてはこれまで様々な議論が行われてきた。しかしその実態についての研究は症例報告等にとどまることが多く、その全体の概観さえも不明であった。わが国では触法精神障害者について法務省により毎年、全国規模の調査が行われている。この調査を基礎にして、再犯に関するその他の資料を収集し、分析することにより、触法精神障害者の犯罪及び処遇に関する知見をえた。今回我々はこの全例について1981年から1991年までの11年間における再犯に関する追跡調査を行い4つの分析を行った。第一には、946人全てを対象として、概観をえるための解析を行った。この時点で明らかになったことは、再犯者にも様々なサブグループが存在し、精神分裂病者の殺人事件はむしろ再犯全体の中では異質な要因として影響を及ぼしているという事である。次にこれら487件の内容についての概要を示した。病名については精神病質、覚醒剤中毒とされた者の再犯率が最も高くそれぞれ100%、66%であり、精神分裂病や躁病では15%,11%と低率である。しかし精神分裂病の再犯事件には凶悪犯罪が比較的多く含まれている。更に殺人と放火については、一般犯罪者を対照群として比較を行っている。三番目に207例のうち、再犯回数が最も多かった2例について事例検討を行った。この2例は精神分裂病であり、さらにいくつかの共通の特徴を持っていた。最後に特に処遇上の問題が大きいと考えられる精神分裂病の殺人の事例に対象を限ってロジスティックモデルを使った解析を行った。現在我々は1994年における触法精神障害者のデータを入手し、更に分析中である。本研究の内容に関してはさらに分析手法を洗練させる必要もあり、これらをあわせて研究を進める予定である。
著者
大石 由美子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

肥満や、脂質代謝異常が慢性炎症を基盤とした動脈硬化をすすめるように、免疫と代謝とは、個体や組織のレベルで密接に連携している。そこで、私は細胞のレベルでも免疫と代謝とが連携しているのではないかと想定した。免疫応答に重要なマクロファージの細胞代謝としての免疫応答が、細胞内脂肪酸代謝と密接に連携して制御されることを見いだした。特に、マクロファージが炎症応答の後期に合成する不飽和脂肪酸が、マクロファージの自律的な炎症収束形質への変化と同時に、全身の炎症応答の収束に必須であることを明らかにした。本検討の結果、免疫細胞の細胞内代謝が炎症の慢性化を防ぐ、新たな治療標的となる可能性が示された。
著者
清水 清美 長沖 暁子 日下 和代 柘植 あづみ
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本年度は、昨年度からの調査を継続(対象者35名へ拡大)した。また、成果発表として、第23回日本受精着床学会(ラウンドテーブル)、第16回日本発達心理学会(シンポジウム)、第3回不妊看護学会(一般演題)として提示、医療者、研究者、一般市民やから評価を得た。不妊治療を実施する医師からは、「日本のAIDの方向づけがない。また、AID実施後にカップルが遭遇する問題や課題が分からない。また分かったとしても臨床の現場ではフォローする時間と余裕がない。このような情報提供やカウンセリングを実施する団体、組織があるなら情報提供することは可能である」などの意見があった。また、看護師からは、「AIDを選択するカップルへどう対応したらよいか分からなかった。対象の特性が理解できた。」「子どもへの告知の問題提示をする必要は感じるが、担当医師はそのように考えていない。どのように折り合いをつけたらよいか難しい」等の意見があった。社会福祉士からは、不妊治療を受ける親と生れた子どもの利益が一致しない現状に対し「AIDは社会的な虐待」という子どもの立場に立った意見があった。また、養子縁組を迎えるカップルからは、「自分たちは親の資質を問われるのに、不妊治療により血のつながらない親子関係をつくるカップルが問われないのはおかしい」という意見があった。今後もAID情報を一般の方にも広め、不妊治療を受けるカップルと生れてくる子ども、双方の利益を考えた我が国の治療体制の有り方の実現化に向け、さまざまな立場から討論される必要があると考えられた。また、AIDが実施されているにもかかわらず、医療者自体がその後のカップルや家族の情報を理解していない現状があり、医療者への情報提供の必要性も考えられた。3年間の調査より、AIDを受けるカップルへの情報提供のツールとして、容易に情報を得る手段として小冊子の作成の必要性が考えられた。そこで、A6サイズの小冊子「AIDについて(仮題)」を現在作成している。作成後には関連する不妊治療施設・不妊相談施設に配布予定である。
著者
大貫 茉莉
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

小学生と中学生を対象に4基本味の味覚検査を実施した結果、全体として6.0~20.9%に感受性低下が認められた。本研究では、味覚感受性低下の有無と口腔保健状況とにあまり関連は認められなかった。今後も小・中学生を対象に、より詳細な味覚感受性低下の実態調査や原因究明に関する研究を実施していくことが必要と考えられた。
著者
早川 清雄 高岡 晃教 亀山 武志
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、毎日、多くの食事を摂取している。食事には、ビタミン・ミネラル・タンパク質をはじめとした必須な栄養素が豊富に含まれており、それらが身体や健康の維持に重要であることが明らかにされている。しかしながら、食品に含まれる核酸による機能性は、ほとんど明らかにされていない。そこで、食品に含まれる核酸に注目し自然免疫応答に対する効果について検討を行った。免疫応答をつかさどるマクロファージ細胞に対して数種類の食品から抽出した核酸と口腔内に存在するペプチドを混合し処理を行うと、細胞質のセンサー分子を介して自然免疫応答が活性化されることがわかってきた。食品由来の核酸は、健康の一端を担っている可能性がある。
著者
高尾 千津子 野村 真理 小森 宏美 中嶋 毅 原 暉之 鶴見 太郎 ウルフ デイビッド シュラトフ ヤロスラフ 宮沢 正典
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はロシア革命後ユーラシアの東西に離散した亡命ロシア人社会と、それに付随して世界に拡散したロシアの「ユダヤ人問題」と反ユダヤ主義の諸相を、満洲、極東に焦点を当てて考察した。特にシベリア出兵期に日本に伝播した反ユダヤ主義、日本統治下満洲における亡命ロシア人社会とロシア・ファシズムの発展、シベリアと満洲におけるシオニズム運動の展開、ホロコースト前夜のユダヤ難民問題における日ソ両国の役割を解明した。
著者
上村 公一 船越 丈司
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

硫化水素(H2S)の細胞への毒性作用の機序を解明するため、ラット胎児心筋由来細胞(H9c2cells)、ラットII型肺胞上皮由来細胞(L2 cells)にH2S供与体としてのNaHSを暴露した。H9c2 cellで3mM、十数時間後から細胞質の萎縮が観察された。5mMで顕著な形態的アポトーシス様細胞死が確認され、caspase3の活性化が見られた。L2 cellsではNaHS 2-3mM、数十分後から、核凝集、細胞膜のAnnecinVとの反応、Cytochrome Cの細胞質への漏出が確認された。L2 cellsではH9c2 cellsより濃度は低く、短時間で細胞毒性が確認された。H2Sの細胞毒性は組織により感受性が異なっていた。
著者
水谷 修紀 長澤 正之
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

がんは環境因子と遺伝的要因によって発生する。これを証明する方法は多くない。我々は二次性白血病でMLL遺伝子の異常がトポII阻害剤でおこること、また乳児白血病でもMLL遺伝子異常が高頻度に見られることから、乳児白血病は発がんにおける環境要因を明らかにするよいモデルであることを明らかにした(Cancer Res 61(6):2542-6.2001)。一方このような環境負荷のもとでがんを発症する個体としない個体があることに注目して遺伝的要因の解明に至ろうとしている。今回の研究によって環境、遺伝、発がんの流れが解明されると期待され、小児科領域のみならず発がん研究全体に対するインパクトは大きい。乳児白血病患者においてMLL遺伝子異常の頻度が高く、この現象がTopoisomerase II αインヒビターによって引き起こされる二次性白血病でも認められることと、過去の研究においてAT患者細胞がTopoIIインヒビターに高感受性を示すことから乳児白血病患者におけるATM異常の関与を疑い、遺伝子の解析を行い、1例でミスセンス変異を認め、このミスセンス変異が正常ATMの機能を抑制するドミナントネガティブ効果もつことを見いだした。ATMは細胞周期チェックポイントの重要な分子であることから、G2/M期、ならびにスピンドルチェックポイントとMLL遺伝子の切断の関係をMLLの5'側、3'側をプローブとしたFISH法により解析した。その結果、正常細胞ではTopoIIインヒビターによってMLL遺伝子の切断とcleavable complex形成がおこるが、細胞周期はM期をこえず、MLL遺伝子の切断端の位置が変化することはないが、ATM欠損細胞ではM期からG1期へ進行する細胞集団が存在すること、さらにG1期へ進行した細胞においで染色体のダイナミックな変化がおこり、MLLの切断端の位置か大きく変化することを発見した。このことはTopoIIインヒビターによるDNA二重鎖切断の修復と細胞周期チェックポイントの正しい制御が染色体異常の進展を防ぐ重要な要因であることを物語っている。
著者
高尾 千津子 鶴見 太郎 野村 真理 武井 彩佳 宮崎 悠 井出 匠 小森 宏美 Wolff David 重松 尚
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

独ソ戦によってナチの支配下におかれた地域のホロコーストの特徴は、ユダヤ人の殺害が現地で執行されたこと、ナチによる占領の初期段階で、現地住民の一部がユダヤ人に対するポグロムに関与したことに求められる。本研究は、ソ連・東欧におけるホロコーストの事例研究に取り組み、現地住民のナチ協力に関しては、新たにソ連の支配下に入ったバルト3国やポーランド東部地域とソ連本国内の東ベラルーシ等とで相違があることを明らかにした。
著者
田中 光一
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

中枢神経系の興奮性シナプス伝達は主にグルタミン酸により担われており、グルタミン酸シグナル伝達の解明は脳機能解明の基礎となる。我々の分野では、神経回路網の形成・脳高次機能におけるグルタミン酸シグナリングの機能的役割を分子、細胞、個体レベルで明らかにすることを目指す。また、過剰なグルタミン酸は神経毒性を示し、様々な精神神経疾患の原因と考えられている。精神神経疾患におけるグルタミン酸シグナル伝達の病態生理学的役割を解明し、それら疾患の新しい治療法の開発を目指す。グルタミン酸トランスポーターは、神経終末から放出されたグルタミン酸を取り込み、神経伝達物質としての作用を終わらせ、細胞外グルタミン酸濃度を低く保つ機能的分子である。現在まで脳のグルタミン酸トランスポーターには、グリア型2種類(GLT1, GLAST)と神経型2種類(EAAC1, EAAT4)の計4種類のサブタイプが知られている。本年度は、グルタミン酸トランスポーターのうち、GLASTまたはEAAC1をノックアウトしたマウスでは眼内圧の上昇を伴うことなく網膜神経節細胞が脱落し視神経が変性するという、正常眼圧緑内障と同様な症状が生ずることを見出した。GLAST欠損マウスではミューラー細胞内のグルタチオン含量が減少しており、グルタミン酸受容体阻害薬を与えると神経節細胞の減少が抑えられた。一方、EAAC1欠損マウスでは神経節細胞の酸化ストレスに対してさらに脆弱化していた。これらの事実からこれらのグルタミン酸トランスポーターはグルタミン酸による興奮毒性の抑制に加えてグルタチオンの合成にも必要であることが示唆される。このマウスは正常眼圧緑内障の始めてのモデルであり、今後のこの種の疾患の治療法の探索に有望なモデルであるとしている。
著者
本田 彰子 正野 逸子 炭谷 靖子 荒木 晴美 赤沼 智子 栗本 一美 菊池 和子 王 麗華 上野 まり 平山 香代子 土平 俊子 川上 理子 藤本 奈緒子 安岡 しずか
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、訪問看護師の継続学習と在宅看護学実習における連携融合教育-学習プログラムを開発し、訪問看護事業所と看護基礎教育機関とのユニフィケーションを推進することを目的に実施した。前半では、連携融合教育-学習プログラムに向けて、訪問看護事業所管理者、在宅看護学担当教員に対する学習支援の実態とニーズの質問紙調査、ヒアリング調査を実施した。後半は、連携融合教育-学習プログラムのモデルにつながる研究交流集会、ワークショップを企画実施した。