著者
六角 香 大中 浩貴
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.2002091, 2013 (Released:2013-08-14)

【目的】CHL/IU細胞はチャイニーズハムスター肺由来の線維芽細胞である。当細胞は,培養方法に難しい技術を必要としないこと,染色体数が少なく,染色体標本の観察が比較的容易であることから,遺伝毒性試験(特に染色体異常誘発性を評価する試験)において汎用されている。通常,培養細胞をこれらの試験に用いる際,あらかじめ継代培養を行った細胞を適宜使用するが,継代培養操作を繰り返すことによる品質の変化についての基礎データは少なく,とくに数週間から数箇月以上に及ぶ試験において,試験使用時毎にその細胞の品質の劣化の有無を確認することは容易ではない。今回,継代操作を多数回繰り返した細胞について,その特性の変化及び劣化の程度を検討した。【方法】CHL/IU細胞を,10%牛胎仔血清含有MEMアール液体培地を入れたシャーレを用いて,5%CO2,37℃の条件で継代培養した。継代回数が10回未満,20回,40回,60回の細胞を用い,各々について特性検査を行った。検査は1)細胞の倍加時間,2)染色体数,3)自然発生による異常細胞出現頻度,4)既知の染色体異常誘発物質(マイトマイシンC,ジメチルニトロサミン及びシクロフォスファミド)で処理した際の異常細胞出現頻度の各項目について実施した。【結果及び考察】細胞の倍加時間,染色体数(異数性異常細胞の増加)並びに自然発生による異常細胞出現頻度(構造異常・数的異常)は,いずれの継代回数の細胞にも差は認められなかった。一方,既知の染色体異常誘発物質で処理した際の異常細胞出現頻度は,いずれの物質においても継代回数40回以上の細胞において減少したことから,継代操作の多数回の繰り返しは染色体異常誘発性の検出精度を低下させると考えられた。