著者
兼島 盛吉 山内 昌治 黒住 耐二
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.110-112, 1987-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
3 3

スクミリンゴガイ(Pomacen canaliculata)の稚貝を10℃,15℃,20℃,25℃,30℃,35℃の温度条件で集団及び個体飼育を行ない以下の結果を得た。1. 個体飼育した場合には,35℃で39日間飼育しても死亡貝は認められなかったが,集団で飼育すると33日目の生存率は,26%に低下した。これは,温度による影響ばかりでなく,共喰や本種の代謝による水質の悪化も影響していると考えられた。2. 15℃~30℃の温度範囲における発育速度は飼育温度が高くなるにつれ高くなる傾向を示したが,35℃になると逆に発育速度は低くなった。その結果,発育適温は25~30℃と考えられた。3. 稚貝の発育速度と温度との関係は直線的であることが確認されたので,ふ化直後の貝の体重の2倍および4倍になると推定される日を基準として,発育限界温度を推定したところ,2倍を基準とすると10.6℃,4倍にすると10,1℃となり,10℃で飼育した貝には発育がほとんど認められなかったことと考え合わせると,本種の発育限界温度は10℃前後と考えられた。