著者
内山 圭太 寺田 茂 宮田 伸吾 三秋 泰一
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.148, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 近赤外線分光法は運動中の骨格筋の酸素動態を非侵襲的、連続的に評価することが可能であり、これまでに様々な負荷運動中の骨格筋酸素動態が報告されている。ramp負荷運動中の骨格筋酸素動態についても多く報告されており、負荷量の増大に伴い、酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)が直線的あるいはS字状に低下することが報告されている。しかし、我々はこれまでにramp負荷運動中にoxy-Hbが増加する被験者を確認している。今回、oxy-Hb増加群の身体的特徴を明らかにするため、oxy-Hb低下群との間で身体機能、呼吸循環機能を比較、検証したので報告する。【方法】 呼吸循環器疾患のない健常男性24名を対象とし、全員に自転車エルゴメーターによる20W/minのramp負荷運動を実施した。非利き足の外側広筋を被検筋とし、無侵襲酸素モニターOM-220(島津製作所)を用いて運動中のoxy-Hb変化量(Δoxy-Hb)を測定した。その変化パターンから、運動開始後より増加する群(増加群;n=12)と低下する群(低下群;n=12)に大別した。また、運動前に大腿動脈阻血法にて較正を行い、阻血中と運動中の還元ヘモグロビン変化量の比から脱酸素化レベルを算出し、運動中の骨格筋の酸素消費能とした。呼吸循環機能の評価としてbreath-by-breath法にて呼気ガス分析を行い、酸素摂取量を測定した。運動終了直前30秒間の平均を最高酸素摂取量(peak V(ドット)O2)とした。運動中は1分間毎の血圧測定とモニター心電図による心拍数のモニタリングを行った。それぞれの指標を対応のないt検定を用いて2群間で比較した。有意水準はいずれも5%未満とした。尚、実験前に被験者全員から書面での同意を得ており、また金沢大学医学倫理委員会の承認を得た上で実験を行った。【結果】 2群間で年齢(増加群vs. 低下群;21.7±1.1 vs. 23.9±2.3歳)、peak V(ドット)O2(34.3±6.1 vs. 39.8±5.0ml/min/㎏)、最高負荷量(3.0±0.5 vs. 3.5±0.4 W/㎏)、最高心拍数(169.5±13.8 vs. 181.8±12.1 beats/min)で有意差が認められた。また、有意ではないが低下群では脱酸素化レベルが高値を示した(36.6±22.2 vs. 55.7±23.1%、p=0.051)。【考察及びまとめ】 ramp負荷運動中にΔoxy-Hbが増加することは、筋において酸素供給量が酸素消費量を上回っていることを示している。本実験の結果、増加群では運動時の最高心拍数が有意に低く、また有意ではないが筋の酸素消費能が低い傾向にあった。心拍数が低値を示していることは運動終了時の血液供給量が低下群よりも少ないことが考えられるため、増加群で認められたΔoxy-Hbの増加は骨格筋の酸素消費能が低いことが原因で生じている可能性がある。