著者
寺田 茂 宮田 伸吾 松井 伸公
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.715-719, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
20

〔目的〕求心性収縮(COC)と遠心性収縮(ECC)時の収縮特性を筋酸素動態の変化から検討した。〔対象〕健常男性16名を対象とした。〔方法〕等速性運動機器を使用しCOC,ECCでの膝関節屈伸運動を行い,同時に近赤外線分光装置にて外側広筋の筋酸素動態の変化を記録した。得られたデータより,運動中の酸素飽和度(SdO2)最下点までの低下量,SdO2最下点までの到達時間,SdO2の回復時間を算出し,COC,ECC間で検討した。〔結果〕筋力はECCの方が高値であった。筋酸素動態では低下量は有意差を認めず,最下点到達時間はECCの方が遅く,回復時間は短かった。〔結語〕ECCではCOCよりも総仕事量が多いにもかかわらず酸素飽和度の低下は遅く,回復が早いという結果となった。これはECCでは機械的効率が高く,また筋血流量は比較的維持されていたためであると思われた。
著者
宮田 伸吾 寺田 茂 松井 伸公
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第24回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.O006, 2008 (Released:2008-12-09)

【目的】 下肢周径囲測定の目的には筋肥大や筋萎縮の評価、浮腫の評価などがある。特に、筋肥大による周径囲の変動幅は短期間では小さく、周径囲測定の高い再現性が必要不可欠である。しかし、予備的研究では同一部位の測定を指示した際にも検者によって3cm程度の誤差が発生してしまう場合があることが判明した。誤差を生む要因としては、測定部位の決定能力の違い、測定値を読み取るときの巻尺の締める強度の違い、下肢の長軸に対する巻尺を巻きつける角度の違い、被検者と検者の測定肢位の違いなどが考えられ、この中で特に大きく影響を及ぼすと考えられたのが、測定部位の決定能力である。本研究の目的は検者にあらかじめ測定部位の決定方法に関して個別指導し、方法を統一した条件下での下肢周径囲測定の個人内再現性と個人間再現性を検討することである。 【方法】 被験者は7名(男性3名、女性4名)で、平均年齢26.0±5.0歳、平均身長167.0±9.1cm、平均体重58.5±10.1kgであった。被験者には本研究の目的と方法について説明し、参加の同意を得た。検者は当院リハビリテーション科の理学療法士10名で、平均経験年数は7.8±6.5年(0年から22年)であった。測定部位の決定方法や、測定値を読み取る際の巻尺の締める強度、下肢の長軸に対する巻尺の角度、被検者と検者の測定肢位を事前に指導し、統一した。特に、大きく影響を及ぼすと考えた測定部位の決定方法については個別に実技指導した。検者全員が同一の巻尺を使用し、測定順序はランダムとした。測定肢は左下肢とし、測定肢位は仰臥位で左下腿を検者の左大腿に載せ、左膝関節伸展0度とした。測定部位は膝蓋骨上縁から近位に10cmと腓骨頭下縁から遠位に7cmの2箇所とした。1回目の測定から6日間の間隔をあけて2回目の測定を実施した。測定値より、級内相関係数(ICC)を算出し、個人内再現性と個人間再現性を検討した。 【結果】 個人内再現性において大腿周径囲でICCは0.83から0.99であり、標準誤差は0.54cmから0.64cmであった。下腿周径囲でICCは0.91から0.99であり、標準誤差は0.37cmから0.46cmであった。 個人間再現性において大腿周径囲で1回目ICCは0.92、2回目0.92で、標準誤差は1回目0.25cm、2回目0.27cmであった。下腿周径囲で1回目ICCは0.93、2回目0.93で、標準誤差は1回目0.18cm、2回目0.16cmであった。 【考察】 個人内再現性においては大腿周径囲測定時と下腿周径囲測定時ともにICCは0.8以上で、桑原らの基準では良好、個人間再現性において大腿周径囲測定時と下腿周径囲測定時ともにICCは0.9以上で、優秀という結果であった。今回のように測定部位の決定方法、特に膝蓋骨上縁や腓骨頭下縁の触診法を統一することで、高い再現性が得られ、臨床において信頼に足るデータを得られることが解かった。
著者
内山 圭太 寺田 茂 宮田 伸吾 三秋 泰一
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.148, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 近赤外線分光法は運動中の骨格筋の酸素動態を非侵襲的、連続的に評価することが可能であり、これまでに様々な負荷運動中の骨格筋酸素動態が報告されている。ramp負荷運動中の骨格筋酸素動態についても多く報告されており、負荷量の増大に伴い、酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)が直線的あるいはS字状に低下することが報告されている。しかし、我々はこれまでにramp負荷運動中にoxy-Hbが増加する被験者を確認している。今回、oxy-Hb増加群の身体的特徴を明らかにするため、oxy-Hb低下群との間で身体機能、呼吸循環機能を比較、検証したので報告する。【方法】 呼吸循環器疾患のない健常男性24名を対象とし、全員に自転車エルゴメーターによる20W/minのramp負荷運動を実施した。非利き足の外側広筋を被検筋とし、無侵襲酸素モニターOM-220(島津製作所)を用いて運動中のoxy-Hb変化量(Δoxy-Hb)を測定した。その変化パターンから、運動開始後より増加する群(増加群;n=12)と低下する群(低下群;n=12)に大別した。また、運動前に大腿動脈阻血法にて較正を行い、阻血中と運動中の還元ヘモグロビン変化量の比から脱酸素化レベルを算出し、運動中の骨格筋の酸素消費能とした。呼吸循環機能の評価としてbreath-by-breath法にて呼気ガス分析を行い、酸素摂取量を測定した。運動終了直前30秒間の平均を最高酸素摂取量(peak V(ドット)O2)とした。運動中は1分間毎の血圧測定とモニター心電図による心拍数のモニタリングを行った。それぞれの指標を対応のないt検定を用いて2群間で比較した。有意水準はいずれも5%未満とした。尚、実験前に被験者全員から書面での同意を得ており、また金沢大学医学倫理委員会の承認を得た上で実験を行った。【結果】 2群間で年齢(増加群vs. 低下群;21.7±1.1 vs. 23.9±2.3歳)、peak V(ドット)O2(34.3±6.1 vs. 39.8±5.0ml/min/㎏)、最高負荷量(3.0±0.5 vs. 3.5±0.4 W/㎏)、最高心拍数(169.5±13.8 vs. 181.8±12.1 beats/min)で有意差が認められた。また、有意ではないが低下群では脱酸素化レベルが高値を示した(36.6±22.2 vs. 55.7±23.1%、p=0.051)。【考察及びまとめ】 ramp負荷運動中にΔoxy-Hbが増加することは、筋において酸素供給量が酸素消費量を上回っていることを示している。本実験の結果、増加群では運動時の最高心拍数が有意に低く、また有意ではないが筋の酸素消費能が低い傾向にあった。心拍数が低値を示していることは運動終了時の血液供給量が低下群よりも少ないことが考えられるため、増加群で認められたΔoxy-Hbの増加は骨格筋の酸素消費能が低いことが原因で生じている可能性がある。