著者
内山 智尋 Chihiro Uchiyama
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.133, pp.137-159, 2020-05-31

超少子高齢化社会である日本では今,「地域」の果たす役割に期待が高まっている。幾度にもわたる介護保険の改正や「ニッポン一億総活躍プラン」,「地域共生社会」,「我が事・丸ごと」など国から出される方針はどれも地域住民の積極的な地域活動への参画を期待したものである。一方で地域では社会的孤立の問題などが深刻化し,地域における互助的機能も弱体化しており,理想と現実のギャップは大きい。本稿の目的は,地域共生社会の推進が難しいのは,国の政策や制度と住民が抱える課題の乖離にあることを指摘し,その解決策を事例分析や理論研究から導き出すことである。住民参加の意味を改めて問い直し,そこで果たすコミュニティソーシャルワーク(以下CSW)の効果的な取り組み方法について,ソーシャルクオリティの包括的視点やエンパワーメントの考え方,また筆者自身のコミュニティサポーターとしての経験から横断組織的な制度や活動の重要性を強調している。住民の参加と社会の発展は車の両輪のような関係であり,互いの相互作用により地域コミュニティが成熟化し,このような関係性の先に地域共生社会があることを提示している。論文(Article)