著者
板垣 竜太
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.149-185, 2013-05

本資料は,朝鮮学校への嫌がらせ事件について京都地裁でおこなわれている裁判のために書いた意見書を全文活字化したものである。前半は,朝鮮学校の現状に関する説明である。日本および朝鮮民主主義人民共和国のカリキュラムとの比較,教科書の歴史的な変遷,朝鮮学校の組織体系などについて論じた。後半では,まず日本における民族教育史をたどりながら,民族教育権という概念が弾圧と抵抗の歴史のなかで編み出されてきたことを論じた。次に,保護者が子どもの言語習得や自尊心の確立を願って朝鮮学校を選択していること,受け身ではなく自分たちの学校と認識しながら子どもを送っていることも述べた。その上で,本件が,歴史的にも他国との比較においても典型的なレイシズム事件に他ならないことを論証した。
著者
西丸 良一
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.141-155, 2014-11

本稿は,X大学Y学部を対象に,入試選抜方法と学業成績・能力向上感の関連を検討した.分析の結果,基本的に各選抜方法のなかで,「一般・センター」で入学した学生のGPAにくらべ,「指定校・公募・AO」「内部推薦」「留学生・社会人・編入」で入学した学生のGPAが低いということはなかった.また,選抜方法によって能力向上感に大きな差もみられないようだ.ただし,GPAと能力向上感にほぼ関連がない.大学教育において,学生の勉学に対する評価がGPAなら,能力向上感と正の関連を示す方が望ましい.なぜGPAと能力向上感が関連しないのかに関しては,今後の大きな検討課題といえよう.
著者
森 類臣
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.31-87, 2009-10

本研究は、2003年に盧武鉉元大統領が行った「記者クラブ」解体のプロセスに焦点を当てている。記者クラブは、日本による朝鮮半島植民地支配の遺物として、日本だけでなく韓国にも戦後継続して存在していた。官庁や大企業などの主要情報源におかれていた記者クラブを、韓国の歴代政権は情報統制に利用し、また、記者クラブ自体が排他的・閉鎖的・差別的構造を持っていたことは、日韓とも同じであった。2003年の記者クラブ解体前には、『ハンギョレ新聞』『オーマイニュース』などによる対記者クラブ闘争があった。Kisha clubs existed in only Japan and the Republic of Korea, which had been colonized by Japan for 40 years. This paper is focusing on process of dismantling of "Kisha Clubs" by the former Korean president Roh at 2003 in the Republic of Korea. The "Hankyoreh" newspaper urged the media industry to reform the kisha clubs in 1991. Further on, the Internet newspaper "Oh My News" fought against the kisha clubs in the Inchon district court in 2001 and then insisted that kisha clubs are against the public's right to know. Shutting down the kisha club helps the media to restore their energy to watch over the centers of power, as shown in the Korean case.
著者
森口 弘美
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.133-148, 2013-05

障害のある人の子どもからの大人への移行期における支援は,これまで教育における「個別移行支援計画」をとおして取り組まれてきた。本稿の考察によって,これまでの移行支援が就業重視になる可能性があること,また親や専門職が主導して作成される可能性があることを指摘した。障害者自立支援法の改正により,今後は相談支援をとおして社会福祉専門職が福祉サービスを利用する障害児に関わるチャンスが増えることから,就業支援に限定されないアプローチや障害のある本人の意向を尊重するアプローチを実践する必要性を提示した。
著者
孫 希叔 ソン ヒスク Son Heesook
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.126, pp.51-72, 2018-09-30

論文(Article)困難に直面した新人ソーシャルワーカーは,他者の有する経験から導き出した判断や対処を,自分が直面している状況に意図的に関連づけ,実践の中での振り返りを行っていた。その過程は,新人ソーシャルワーカーの内面的変化に至る過程であり,それによって意識的に生成された知は,新たな状況に対する自己の行動様式として再構築され,より洗練された実践へと移行していることが示唆された。Novice Social Workers with neither enough empirical knowledge nor skills were puzzled by "the deviation from the image originally held" and were unable to stand the "imposition of different values," and they thus felt frustrated with the "lack of good experience." They were trying to resolve the anxiety arising from their immaturity and weak minds by "compromising with the thoughts of different perspectives." and "relying on others." However, if they encountered difficult circumstances again without having the opportunity to compensate for the "lack of experience sharing" or the "lack of the ability to reflect" due to the "absence of someone to consult or who can be a support," they became exhausted mentally and physically, thus causing a vicious circle of "negative self-evaluation."
著者
田島 悠来 タジマ ユウキ Tajima Yuki
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.119, pp.19-40, 2016-12

論文(Article)本稿では、「ご当地アイドル」のパフォーマンスを事例に、住民主体の地域振興のあり方について探究した。その際、パフォーマンス研究という枠組みを用い、「ご当地アイドル」のメンバーおよび運営にまつわる関係者に対して実施した聞き取り調査の結果をもとに、メンバー(=パフォーマー)にとってパフォーマンスがどのような効果を発揮し、それが地域振興とどのように関わっていったのかを、シェクナー(2006)が提唱したパフォーマンス機能の類型を参照しながら考察した。以上の結果、「ご当地アイドル」のパフォーマンスは、パフォーマーにとって、娯楽、アイデンティティの確認・変更、共同体の構築・維持、教育・説得という主として4つの機能を持つことで、若い世代が主体となる地域振興の可能性を提示していることが導き出せた。This paper examines the regional revitalization as an empowerment by local residents, through a case study about the activities of regional idols in Japan. In this article, I discuss what impacts were had on the members of idol groups (performers) and how their performances were related to regional promotion, using the framework of performance studies and having semi-structured interviews with regional idols and their stakeholders. Refer to Schechner's theory about the functions of performance (2006), the performances of regional idols have mainly four functions for performers: to entertain, to mark or change identity, to make or foster community, and to teach, persuade, or convince. At the same time, this implies the potential for the empowerment of young generations.
著者
口村 淳 クチムラ アツシ Kuchimura Atsushi
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.126, pp.1-13, 2018-09-30

論文(Article)本研究の目的は,他職種からみた生活相談員に対するイメージや期待する役割を把握した上で,生活相談員業務のあり方について検討することである。社会福祉法人A系列の特別養護老人ホームを調査対象にし,生活相談員以外の専門職から102通の回答を得た。分析の結果,生活相談員は他職種から,相談援助や連絡調整を中心とした役割を期待されている傾向があることが明らかになった。This study aims to examine residential social worker's expected roles from the other professionals viewpoints and to consider the direction of residential social work. The target of the questionnaire survey was a social welfare corporation affiliated special nursing home for the elderly, and 102 professions other than residential social worker responded. As a result of analysis, the following trend was revealed that residential social worker was expecting the role of consultation aid and coordination mainly from other professions.
著者
空閑 浩人
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.108, pp.69-88, 2014-03

論文(Article)本稿は,日本人の文化を「場の文化」であるとし,それに根ざしたソーシャルワークのあり方としての「生活場モデル(Life Field Model)」の構想を試みたものである。それは,日本人の生活と文化へのまなざしと,日本人が行動主体や生活主体として成立する「場」への視点とアプローチを重視するものであり,日本人の生活を支える「生活場(Life Field)」の維持や構築,またその豊かさを目指す,言わば「日本流」のソーシャルワークのあり方である。その意味で,この「生活場モデル」研究は,確かに日本の「国籍」をもつソーシャルワーク研究である。しかし,それはいたずらに日本のソーシャルワークの独自性のみを強調し,そこに固執するものでは決してなく,日本の中だけに止まらない国際的な可能性をも持つものである。The purpose of this paper is to examine an idea of "Life Field Model" in social work theory and practice, while considering that Japanese culture is "the culture of field." This model thinks as important the look to Japanese life and culture, and the viewpoint and the approach to the "field" where Japanese people can be as the subject of one's action and life. Furthermore, so to speak, this model is "a Japanese style" of social work, which aims at maintenance, construction, and affluence of the "Life Field" supporting a life of Japanese people. In that sense, this study of "Life Field Model" is that of social work which surely has "nationality" of Japan. However, it never emphasizes and persists in only the originality of social work in Japan. This social work model may be effective as an international model of social work theory and practice.
著者
田島 悠来
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.35-60, 2012-11

本稿は,雑誌『明星』(集英社),中でも,本雑誌の最盛期と目される1970年代の『明星』に着目し,雑誌の編集体制を捉えながらその読者ページの変遷を辿り,特に,読者ページ「ハローキャンパス」を中心にそこでどのような交流が図られていたのかを1970年代という社会的文脈の中で探ることを目的としている。その結果,1970年代の『明星』は,進学率の飛躍的な伸びとそれによる「ヤング・マーケット」の導入を背景として発展し,雑誌としての「黄金の時代」を迎えるとともに,代表的な読者ページである「ハローキャンパス」では,「ヤン グ」であることを基盤とした共同体が形成され,「スター/アイドル」と読者や,編集者を介しての読者同士という双方向のコミュニケーションが展開されていたことが明らかになった。
著者
郭 芳 カク ホウ Kaku Hou
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.130, pp.23-43, 2019-09-30

論文(Article)高齢者のニーズが変化していくなかで,高齢者に対するサービス供給システムの諸要素およびその構造も変化していく。本稿の目的は,時代の変化に伴う高齢者ニーズの変貌のなかでの高齢者福祉サービス供給の発展経路を考察することを通して,その特徴を明らかにすることである。具体的には,サービス提供の責任主体,供給主体,サービス提供に直接関わる諸要素(提供内容や提供方式,費用負担),利用者の4 つの視点から検討を行った。そして,地域包括ケアシステムの構築が課題となっている今日において,新たな局面を迎えている高齢者福祉サービス供給システムが直面する課題を提示した。それは,基盤を失っていった家族と地域を提供主体として再活用するには,その具体的な支援策を同時に打ち出さなければならないことである。
著者
丁 偉偉 テイ イイ Ding Weiwei
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.116, pp.41-71, 2016-03

論文(Article)本稿は,1972年から2012年までの尖閣諸島問題に関する朝日新聞と読売新聞の社説を対象とし,内容分析と併せて計量テキスト分析を用い,質的・量的分析の組み合わせから検討したものである。両新聞のスタンスによって,関連社説における報道の重点および論調の相違があることが明らかになった。一方,尖閣諸島問題の顕著化とともに,尖閣諸島を自国の領土として定着したものとして報道する傾向は両新聞の関連社説に一致していることが読み取れた。In this paper, I analyzed the editorials of the Asahi Shimbun and Yomiuri Shimbun from 1972 to 2012 by using content analysis and quantitative content analysis. It became clear that the difference between the two newspapers' stances on the topic resulted in a difference in the emphasis of reports and the tone of the editorials. On the other hand, as the dispute over the Senkaku/Diaoyu Islands became more intense, the editorials of both Asahi Shimbun and Yomiuri Shimbun started showing a clear tendency towards portraying the Senkaku/Diaoyu Islands as "Japanese Territory".p.50 下から11行目と10行目に誤りあり (誤)②尖閣諸島を日本の固有領土とする記述, ③尖閣諸島の枕詞(補充表現)に関する記述 → (正)②尖閣諸島の枕詞(補充表現)に関する記述, ③尖閣諸島を日本の固有領土とする記述 p.51 表4の表記に誤りあり (誤)②=尖閣諸島を日本の固有領土とする記述;③=尖閣諸島の枕詞(補充表現)に関する記述 → (正)②=尖閣諸島の枕詞(補充表現)に関する記述;③=尖閣諸島を日本の固有領土とする記述
著者
伊藤 高史 イトウ タカシ Ito Takashi Itoh Takashi
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.128, pp.21-38, 2019-03

論文(Article)「ジャーナリズムは今(現在)を伝える」という言葉で,ジャーナリズムの機能が語られることがある。本稿の目的は,このように表現されるジャーナリズムの機能を,ニクラス・ルーマンの社会システム理論の観点から明らかにすることである。ルーマンはマスメディアを「情報/非情報」の二値コードによる選択を行うシステムとして定式化した。この場合の「情報」とは,システムの作動を継続させていくものことを意味する。ジャーナリズムが「情報/非情報」の二値コードによる選択を行うとは,情報を通じて構造的カップリングの状態にある他の社会システムを作動させることである。ジャーナリズムが別の社会システムを作動させるその瞬間,過去と未来を切り離す「今(現在)」が生み出されるのである。
著者
塩田 祥子 シオタ ショウコ Shiota Shoko
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.116, pp.105-122, 2016-03

研究ノート(Note)新カリキュラムが導入され,実習内容は,実習生に社会福祉士の業務や役割をみせることに重点が置かれた。そして,実習内容にケアワーク実践を組み込むことに否定的となった。そのことは,ケアワーク実践なしに,実習生が利用者と関わり,関係を築くことを求めている。しかし,実習生がどのように利用者と関わり,利用者の理解を深めていくのか,その方法は明確ではない。そのため,実習においては,ケアワークとの差別化に固執するのではなく,社会福祉士としての利用者理解の方法,視点について具体的に考える議論が必要である。そして,実習生が利用者との関わりを大切にする環境を整えていくことが求められる。それは,実習内容からケアワークを取り除くといった安易なことではなく,ソーシャルワーク,ケアワーク,それぞれの独自性を尊重することにつながる。The content and practices of training in the new curriculum for social workers emphasizes teaching the trainees the duties and roles of certified social workers. It has turned away from the inclusion of hands-on practicum care work with the clients. Although the goal is to encourage trainees to interact and build relationships with their clients without having practiced care work. There are no clear standards or guidelines for approved methods for how to appropriately and effectively interact with clients or gain a better understanding of the clients. Hence, the training needs a discussion about the methods and perspectives by which certified social workers gain an understanding of the population that they serve rather than obstinately trying to differentiate it from care work. Moreover, the training environment should place great value on trainees' interactions with clients to create respect for the unique features of both social work and care work, which does not simply mean the removal of care work from the training content.
著者
黄 琬茜 コウ ワンセン Huang Wan-Chien
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.117, pp.179-199, 2016-06

論文(Article)台湾における国際結婚は年々増加し,それらの新移民の子どもが就学する数もどんどん増えてきている。2012年には,小中学校に就学している「新台湾之子」が20万人を超えた。台湾政府は,台湾が本格的な多文化社会になるために,近年,国際結婚家庭をサポートする政策やプログラムなどを積極的に推進している。そして,2012年には「全国新住民たいまつプログラム(全国新住民火炬計画)」を策定した。これは,新移民の人々と台湾人の関係をより良くするための,学校を中心として行われるプログラムと言える。この「たいまつプログラム」では,新移民の母語・文化を継承するため,小学校でその母語学習のコースを設けた。そして,このコースのために,『新住民母語生活学習教材』を開発し編成した。しかし,授業中,その教材はほとんど採用されていなかったことが報告されている。本研究の主な目的は,その教材の構成やその長所と短所を分析した上で,子どもの言語学習教材として適切であるかどうかを明らかにすることである。また,なぜ,その教材が教師に採用されなかったのかについても考察する。