- 著者
-
内山 竣介
寺尾 知可史
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.4, pp.156-160, 2023 (Released:2023-12-25)
- 参考文献数
- 15
近年のゲノム解析により,健常者において加齢とともにクローン造血の特殊な状態である血中体細胞モザイクが増加し,造血器腫瘍の発生リスクとなることが明らかとなった。正常脳の神経細胞においても,神経発生のさまざまな段階において一塩基レベルでの体細胞変異が蓄積していることに加え,DNMT3Aなどクローン造血に関連する変異が多いことが明らかになった。この結果は正常脳においても加齢と共に体細胞モザイクが蓄積することを示唆する。自閉症スペクトラム障害(ASD)や統合失調症など精神疾患では,一塩基レベルや染色体レベルでの血中・脳の体細胞モザイクが増加していることが報告されており,病気の発症リスクになると考えられている。本稿では,正常脳の神経細胞における体細胞モザイクの関連を説明したうえで,一塩基レベル/染色体レベルでの体細胞モザイクと,ASD,統合失調症の関連について最新の話題を解説した。