著者
寺尾 知可史
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

関節リウマチの滑膜に発現するタンパクの分布が異なる可能性を考え、各関節部位の滑膜、特にDIP関節の滑膜の収集を試みたが、ヒトで検体を保持している施設はほとんど見られなかった。そこで、関節炎モデルにも用いられるカニクイザルを対象とすることとした(モデルではDIP滑膜はやはり影響を受けにくい)。新日本科学に依頼し計3匹の各関節(手足DIP,PIP,MP,手関節、肩、肘、股関節、膝、足関節)から滑膜を取得した。サル関節滑膜からのRNA抽出の条件検討を行い、最適化の上で抽出を行った。ボストンのブロード研究所でRNAシーケンスを行って転写産物の網羅的データを得た。遺伝子転写産物の解析を現在行っている。
著者
内山 竣介 寺尾 知可史
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.156-160, 2023 (Released:2023-12-25)
参考文献数
15

近年のゲノム解析により,健常者において加齢とともにクローン造血の特殊な状態である血中体細胞モザイクが増加し,造血器腫瘍の発生リスクとなることが明らかとなった。正常脳の神経細胞においても,神経発生のさまざまな段階において一塩基レベルでの体細胞変異が蓄積していることに加え,DNMT3Aなどクローン造血に関連する変異が多いことが明らかになった。この結果は正常脳においても加齢と共に体細胞モザイクが蓄積することを示唆する。自閉症スペクトラム障害(ASD)や統合失調症など精神疾患では,一塩基レベルや染色体レベルでの血中・脳の体細胞モザイクが増加していることが報告されており,病気の発症リスクになると考えられている。本稿では,正常脳の神経細胞における体細胞モザイクの関連を説明したうえで,一塩基レベル/染色体レベルでの体細胞モザイクと,ASD,統合失調症の関連について最新の話題を解説した。
著者
大村 浩一郎 山本 奈つき 寺尾 知可史 中嶋 蘭 井村 嘉孝 吉藤 元 湯川 尚一郎 橋本 求 藤井 隆夫 松田 文彦 三森 経世
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.310a-310a, 2012

Myelin basic protein(MBP)は神経ミエリン鞘を形成する主要なタンパクであるが,関節リウマチ(RA)において,myelin basic proteinに対する自己抗体が高率に認められることを我々は以前報告した(PLoS One 2011; 6: e20457).ヒト脳由来抽出タンパクを抗原として用いた場合,抗MBP抗体はRAの約65%に認められ,特異度は膠原病患者を対照として83%であり,またその対応抗原は主にMBPタンパク自身ではなく,シトルリン化MBPに対する抗体であることも明らかにした.一方,MBPは神経系に発現するclassic MBPと神経系のみならず血球系にも発現するGolli-MBPのアイソフォームがあり,それぞれにまたいくつかのアイソフォームが存在する.RAで認められる抗MBP抗体の対応抗原がclassic MBPなのかGolli-MBPなのかは不明であったことから,classic MBPおよびGolli-MBPのrecombinantタンパクを作成しin vitroでシトルリン化し,ELISAで抗MBP抗体を検出したところ,その感度,特異度に差は認められなかった.現在Golli-MBPのアミノ酸配列(304アミノ酸)を15種類の25アミノ酸ペプチドでカバーし,それぞれのペプチドをシトルリン化して抗原とし,12人の抗MBP抗体陽性RA患者血清を用いてELISAにてエピトープマッピングを行っている.<br>