著者
内村 英輝 安田 麻里絵 内山 清貴 伊藤 智章 田島 敬也 菱川 慶一 安部 瑞歩 芳山 麻優 河地 真由美
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.477-482, 2017 (Released:2017-07-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

血液透析において, 太い針の穿刺による侵害受容性疼痛は避けることができず, 患者の深刻な悩みの一つである. この疼痛に対し, 著しい改善をもたらすリドカイン-プロピトカイン配合クリーム (エムラ®クリーム) が2015年に日本で効能追加となった. 当院においてリドカインテープにて疼痛緩和が十分でない患者21症例に対し, 同クリームを前腕または上腕の穿刺予定部位に塗布した. NRS (numerical rating scale) を用いて定量的な評価を行ったところ, 有意に疼痛が減少した (リドカインテープで8.0±1.2, リドカイン-プロピトカイン配合クリームで2.1±2.2, p<0.0001). 「無痛透析」を「穿刺時の侵害受容性疼痛が消失すること」と定義すると, 同薬で「無痛透析」が実現された症例もあった. 痛みは単に患者のQOL低下をもたらすのみならず, 生体のホメオスタシスをも妨げるゆえ, 医療者は痛みを積極的に管理することが重要である. リドカイン-プロピトカイン配合クリームは, 透析の穿刺痛を著しく緩和し, 患者のQOLを高めた.