著者
伊藤 智章
出版者
日本地理教育学会
雑誌
新地理 (ISSN:05598362)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.32-43, 2005-03-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

This report is a practice record of high school geography class with using GIS (Geographic Information System). Today, GIS does not become a popular tool in Japanese geography class. The reasons, the author points out, are two problems. First, many high school teachers think that GIS does not fit their geographical exercise for college examinations Second, a GIS software is not easy for students. When the teachers teach geography with GIS, they have to teach about software more about geographical subjects. The teachers who do not use GIS not so more tend to think that GIS is not useful tool for their classroom. The author tried to make a practice to solve these problems.The author showed students how to solve a “Center test”, or a simultaneously test for college entrance examination asked by public examination center, with a diagram which was drawn by GIS software, “Kashmir”. It is well known software among Japanese mountain lover. Not only processing digitalized topographical data, drawing a bird's view diagram for example, but also searching Japanese topographical map from an Internet service. The teacher could comment smoothly with showing online map and bird's view diagram. Students understood about how to solve the tests more.Today, we can get the map and data from an internet. But if students use the data with each own computer, it is very difficult to understand more. In this case, the teacher is just showing the diagram made by GIS. The author believes that the teachers have to use GIS more easily.
著者
伊藤 智章
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.62, 2005

2005年3月31日に、市町村合併特例法による特例措置が終了し、「平成の大合併」と言われた市町村の再編成が一段落した。住民から賛否の声を受けつつも、次々に行政界や市町村名が変更され、新たな市町村の誕生と、旧来の町村が消滅した現状をどう取り扱うかについての議論は十分に行われているとは言い難い。<BR> 本報告は、以上の問題意識に立ち、高等学校の地理で行った授業例を紹介し、地理教育で市町村合併の問題を取り扱うことの重要性と、具体的な指導法について提案する。<BR> 授業は、2005年4月から、6月にかけて、静岡県立長泉高等学校の3年生を対象として行った。GISソフトの「MANDARA」の操作を学ぶ傍ら、静岡県内で、ここ3年以内に合併した市町村を図示し、その地図の上に、財政に関する統計(財政力指数・税収額など)、人口に関する統計(人口増加率、高齢者人口比率など)から作成した地図を重ね合わせ、市町村合併を選択した市町村に共通する特性を明らかにした。<BR> 結果として、合併を選択した市町村の多くは、財政力指数が低く、自主財源による行政運営が困難であること、合併には、財政規模が大きな市町村が周辺町村を吸収する形(浜松市・沼津市など)と、小規模な市町村同士が連合して、全く新しい名称の市町村が誕生させる合併(伊豆市・伊豆の国市があることが明らかになった。<BR> 次に、広域合併が検討されている静岡県東部の市町村を対象とし、市町村間の関係の図示し、その必要性の有無と、仮に合併した場合に予想される問題について検討させたところ、沼津市と三島市および周辺市町村の間では、相互の人口移動が大きく、実質的に同一の都市圏にあることが分かった。<BR> 生徒は、合併推進の根拠となる、生活圏の拡大と広域行政の必要性について理解する一方で、市町村毎の公共料金や、住民一人当たりの歳出額の増減など図示し、合併に伴うメリットとデメリットを提示した。地元の町会議員を招いて行った報告会では、生徒の報告に基づいて、活発な議論が展開された。<BR> 今回の授業では、生徒に市町村合併問題を身近な問題として捉えさせることを目指した。結果として、統計を図示して重ねることで、論点が明確になり、活発な議論を展開することが出来た。<BR> 市町村合併の問題は、学習指導要領が言うところの「地図化して考える有意性」、「地理的見方・考え方の育成」を具現化する上で格好の教材である。また、地理教育の意義を世間に伝える上で、格好の事例となりうるだろう。幅広い議論と情報の提供、全国各地での実践の蓄積を期待したい。

2 0 0 0 OA GISと地理教育

著者
伊藤 智章
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.49-56, 2012 (Released:2012-04-09)
参考文献数
35
被引用文献数
3 3

GIS(地理情報システム)は,高等学校の次期学習指導要領 2009(平成21)年版において初めて本文中に明記された.新学習指導要領は,地理教育の目標を達成するために,GISをどう活用することを求めているのか,それを受けて教員は,GISをどのように活用していくべきかを論じた.新学習指導要領は,地理的技能の獲得のためにGISを教育の内容全体において活用することを求めており,連携を求めた関連他教科(情報科や中学社会科)よりも,地理は踏み込んだ表現を行っている.現在,高等学校の地理教育におけるGISの活用は不十分であり,克服するべき課題が多く残されている.問題の解決のためには,教員が,地理的技能の獲得手段としてのGISの効果を認識し,現場の実情に合った方法論と教材を共有することと,GISを使って地理教育を充実させるために必要な環境を整えることが重要である.
著者
内村 英輝 安田 麻里絵 内山 清貴 伊藤 智章 田島 敬也 菱川 慶一 安部 瑞歩 芳山 麻優 河地 真由美
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.477-482, 2017 (Released:2017-07-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

血液透析において, 太い針の穿刺による侵害受容性疼痛は避けることができず, 患者の深刻な悩みの一つである. この疼痛に対し, 著しい改善をもたらすリドカイン-プロピトカイン配合クリーム (エムラ®クリーム) が2015年に日本で効能追加となった. 当院においてリドカインテープにて疼痛緩和が十分でない患者21症例に対し, 同クリームを前腕または上腕の穿刺予定部位に塗布した. NRS (numerical rating scale) を用いて定量的な評価を行ったところ, 有意に疼痛が減少した (リドカインテープで8.0±1.2, リドカイン-プロピトカイン配合クリームで2.1±2.2, p<0.0001). 「無痛透析」を「穿刺時の侵害受容性疼痛が消失すること」と定義すると, 同薬で「無痛透析」が実現された症例もあった. 痛みは単に患者のQOL低下をもたらすのみならず, 生体のホメオスタシスをも妨げるゆえ, 医療者は痛みを積極的に管理することが重要である. リドカイン-プロピトカイン配合クリームは, 透析の穿刺痛を著しく緩和し, 患者のQOLを高めた.
著者
伊藤 智章
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

タブレット型携帯情報端末で動作するアプリケーションソフトを利用して、地図を共有するシステムを考案した。現在、導入が検討されている「デジタル教科書」の多くが、授業者主導の教材作成ができない状態になっている中で、タブレット端末を使った「デジタル地図帳」は、GISを援用して、誰でも自由に教材を作成、共有できるのが特徴である。 今回は、Apple社の「iPad2」を用いた。利用したソフトは、「GoogleEarth」と、地図アプリ「ちずぶらり」である。教室での利用と、野外調査での利用を想定して、実証実験を行った。 「Google Earth」は、パソコン用の各種GISソフトとの親和性が高いので、授業者が作った主題図や、インターネット上で調達した各種データを生徒の手元で簡単に提示することが可能である。ただし、回線速度や動作の安定性に課題があるため、野外巡検での利用には課題が残る。 「ちずぶらり」は、地図を画像データとしてとして扱い、位置情報の付与や写真の埋込みはパソコンからクラウド経由で行う。地形図はもとより、位置情報を持たない古地図や観光案内図、ハザードマップなどをタブレットで持ち運ぶことができる。また、インターネットに繋がらなくても閲覧や現在地表示が可能なので、野外調査実習の教材としての実用性が高い。ただ、位置情報を持っているGISデータも、画像として取り込んで位置合わせをし直さなければならないこと、アプリ更新の承認等の手続きが必要なため、地図の登録から閲覧開始までのタイムラグが長いこと、地域および更新者を限定しているので一般の教員が手軽に利用する環境にないこと等である。 地理教育は、「セルフメイドの地図帳」を手に入れようとしている。明らかになった課題を基に改善を行い、現場主導のデジタル教材開発を充実させていきたい。
著者
伊藤 智章
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.516-525, 2016 (Released:2017-03-29)
参考文献数
9

高等学校の地理教育におけるGISの普及低迷を打破するための手段として,タブレットコンピューターの活用を企図し,学校の現状に合わせた教材を開発した.沖縄への修学旅行の事前学習と現地研修において,現地の新聞記事とデジタル地図を組み合わせたアプリケーションソフトを作り,地図と記事との関連づけや,現地での研修を行うことにより,生徒に沖縄の歴史と市街地の変遷について深く理解させることができた.タブレットコンピューターによるGIS教材は,パソコンよりも操作が容易であり,かつインターネットへの常時接続を必要としないため,汎用性が高い.本教材を地理教育にGISを浸透させるための有効な手段として位置づけ,今後も普及を図っていきたい.