著者
小島 健太郎 小島 早織 内海 恵利 江成 暁子
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.13-15, 2020 (Released:2020-08-26)
参考文献数
5

肥満細胞腫(MCT)は犬の皮膚悪性腫瘍では最も多いが、筋肉内MCTの情報は極めて少ない。今回、大腿二頭筋に発生したMCTに対して外科的治療を行った症例を経験したので報告する。11歳、避妊雌、ラブラドール・レトリーバーが右大腿二頭筋に発生した最大径5.7 cmの筋肉内腫瘤を主訴に来院した。腫瘤を含む大腿二頭筋の部分切除および同側の膝窩リンパ節の摘出を行った。病理組織学的診断はMCTであったが不完全な外科マージンと評価され、c-kit遺伝子exon9に変異を認めた。術後8日目に拡大再切除を実施したが、摘出組織には組織学的に腫瘍細胞は認められなかった。術後692日に死亡するまで、再発や転移は認めなかった。本症例から筋肉内MCTの治療として筋肉の部分的切除が選択肢の1つとなる可能性が示唆された。