著者
内海 要三 亀井 和久 内藤 亮
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.39-48, 2004-01-01
被引用文献数
4

マイクロ波・ミリ波帯における液晶の誘電率を, この周波数帯で可変遅延線等の多くのアダプティブデバイスの開発が進められているマイクロストリップライン構造で, 誘導結合型リング共振器を用いて直接測定した. 液晶層を誘電体基板としたリング共振器の共振周波数の実測値と電磁界シミュレーションの値を照合することにより, 液晶分子の長袖方向が高周波電界に平行であるときの比誘電率ε_<//>と垂直であるときの比誘電率ε'⊥, 及び誘電異方性△ε'を決定する測定法を示した. マイグストリップライン構造では, 液晶の粘性やマイクロストリップライン構進にもよるが, 液晶分子の配向を印加直流電界により完全には制御できない. そのためε_<//>が液晶材料そのものの誘電率より小さな値になる. 本論文ではその原因について考察しマイクロストリ7プ直下とそれ以外の領域の静電エネルギーの計算と液晶分子配向の不完全さを示す観察写真により実効配向係数恥の物理的意味を明確にした. 液晶を用いた7イクロストリップライン構造のデバイスでは, ε_<//>の実効的な値は材料自身の誘電率にη_αを掛けた値で回路設計を行うべきことを示した.
著者
亀井 利久 内海 要三 森武 洋 戸田 耕司 鈴木 洋介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.1149-1158, 2002-12-01
被引用文献数
24

マイクロ波・ミリ波帯における可変遅延線などのアダプティブデバイスへの液晶の応用を目的に,5種類のネマティック液晶の複素誘電率と電圧印加に対する応答時間を測定した.誘電率については,液晶分子長軸が高周波電界と平行のときの比誘電率の実数部ε´_//と垂直のときの比誘電率ε´_⊥を,またtanδについてもtanδ_//,tanδ_⊥を求めた.これら液晶の誘電特性の測定においては,10kHz〜13MHzについては,ラビング処理を行ったITOガラスにサンドイッチされた液晶セルのキャパシタンスとコンダクタンスを直接測る方法を用い,100MHz〜40GHzについては,長さの異なる2本の同軸管に液晶を充てんし,それぞれの群遅延量及び伝送損失の差から求めるカットバック法を新しく提案している.低周波領域における誘電緩和を確認するとともに,特に3〜40GHzにおいては連続的な周波数変化に対応する形で誘電特性を示した.その結果ε´_//は3,ε´_⊥は2.5程度の値で周波数に依存せずほぼ一定となり,二つの配向方向による誘電率の差である△ε´は材料によって0.4から0.8と大きな差異を示し,最適材料選択の重要な指針となることがわかった.また,偏光方向を平行に配置した2枚の偏光子の間に液晶セルを配置し,He-Neレーザ(632.8nm)を液晶セルに照射し,透過光をホトダイオードで検出する方法で応答時間の測定を行い,液晶をアダプティブデバイスに用いたときの高速性について検討を行った.更に,二つのネマティック液晶の測定結果を用い,20,30,40GHzにおける可変遅延線の設計についての考察を行い,具体的な液晶材料選択の指針を与えた.