著者
内田 ユリ子 石崎 俊 井佐原 均
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.245-246, 1989-03-15
被引用文献数
1

テキストは、その構成部品がある原理に従って配列されたものであるが、その配列原理の如何について広く受け入れられるような解答は存在していない。テキストを構成する部品の単位には、語、句、節、文、更にパラグラフや、章、巻なども考えられる。ここでは、これら全てを総称して、セグメントとよぶことにする。テキストにはそれを構成するセグメントの間の統語的関係(結束性、cohesive)と共に、内容的な連関性(首尾一貫性、coherence)が存在する。結束性が統語的な言語上の手段--例えば、代名詞による指示、接続詞や接続副詞による結び付け、類義語や類義表現による言い替えなど--によるのに対して首尾一貫性は、主として、書き手と読み手の言語外の知識や手段--例えば、現実世界に関する知識、書き手・読み手の仮定や推論など--による談話やテキストの内容のまとまりを指す。複数パラグラフよりなるテキストの場合は、1つのパラグラフ内部にはもとより、パラグラフ同士の間にも内容的な連関性が存在する。首尾一貫性は、テキスト全体に及ぶものであるが、結束性についても局所的なものばかりでなく、パラグラフを超えて働く統語制約(例えば、再参照による冠詞theの生成など)も考えられる。従来の研究では、テキストの構成要素の間の内容的連関性に関しては、主として文や節を対象として議論されてきたが、本稿では、複数パラグラフよりなるテキストのパラグラフ間の構造的連関性にも適用できる理論として、テキストの意味表現構造と首尾一貫性の関係、および読み手の持つ情報の新旧と首尾一貫性との関係に付いて述べる。また、首尾一貫性のあるテキストの実例を示し、それのパラグラフ構成とテキストの背後にある情報構造との関係について検討し、テキスト生成との関連も述べる。