著者
内田 啓司
出版者
昭和大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

目的多量の高分子抗原が,消化管に入ると,正常の消化管であれば,種しゅの酵素,IgA, pinocytotic, 粘着バリアーなどの働きにより,容易に抗原性の持たない物質に分解される.しかし,腸管アレルギーでは,腸管粘膜の波状をきたし,容易に高分子抗原物質を分解できず,体内に吸収されることが報告されている.1981年,ROBERT等は分子量45.000のオバアルブミンで感作されたRatを用い,その腸管にオバアルブミンでchallenge後1時間後に分子量18.000のβ-lactoloblinの吸収がオバアルブミンで感作されていない(コントロール)群に比べ血中に抗原性を持つ形で出現することを報告した.また,高分子蛋白の最高血中濃度は,負荷後2時間が最高血中濃度を呈すことが報告されている.方法分子量45.000のオバアルブミンで感作されたRatを用い,オバアルブミンで経口的にchallenge後,1時間後,3時間後,6時間後,12時間後,24時間後の5群に分け,高分子抗原の分子量18.000のβ-lactogloblinを経口的に投与し,最高血中濃度を呈す2時間値(吸収率)をELISAを用い,その値をそれぞれの群で比較検討し,それを腸管炎症マーカーとした.結果1時間群(n=9)では,55%(5/9)に,β-lactogloblinが血中に出現した.また,55%の平均血中β-lactogloblinは,189.3ng/ml, 3時間群(n=5)では(1/5),20%の陽性率であった.またその1例の血中濃度は1800ng/mlであった.6時間群(n=7)では,(4/7) 57%で陽性であった.平均血中β-lactogloblinは,900ng/ml, 12時間群は,negative dataであった.24時間群(n=10)では,40%の陽性率であった.また,平均血中β-lactogloblinは,97.6ng/mlであった.考察今回の検討から,challenge後1時間から6時間あたりまでβ-lactogloblinの腸管吸収が亢進しており,12時間後には,一時低下するものの,24時間後に再びβ-lactogloblinの腸管吸収の亢進が認められた.このように2相性に,しかも持続してβ-lactogloblinの腸管吸収が認められる機序に関してはIgEdependent mechanismの即時相だけでなく,連発相も関与して抗原吸収に影響を及ぼしている可能性が示唆された.