- 著者
-
内藤 幸一郎
城本 啓介
- 出版者
- 熊本大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-01
本研究では記号力学系理論とp-進数論に現れる非アルキメデス的性質等の特異性を利用した複雑性解析研究とその耐量子計算機暗号理論への応用を主目的とする。H27年度からの継続研究では、記号力学的に定義されるp-進数を振動数として持つ準周期的力学系の再帰的挙動解析を行い、軌道の予測不能性が生じるための十分条件を導いた。この研究結果は学術論文誌J.Nonlinear and Convex Anal.に掲載発表された。p-進多重近似格子に現れる最短ベクトル問題の計算困難性を利用した格子暗号系の提案とLLLアルゴリズムを用いたその安全性に関わる数値実験結果を学術論文誌Linear and Nonlinear Analysisに3編発表した。さらに、p-進馬蹄写像で定義される記号力学系のカオス性を証明し、この応用として擬似乱数生成器を提案し、生成されたp-進擬似乱数列の乱数度をランダム行列理論検定により評価した。この研究成果については国際学会NACA2017で基調講演発表を行い、同国際会議論文誌に掲載予定である。量子計算機の実現が予想される事例が頻繁に報告されている現在、特にランダム性を取り入れ安全性をより高めた暗号研究が早急に必要であるため、p-進擬似乱数生成器の提案は耐量子計算機暗号研究における重要な基礎研究成果である。分担者は暗号理論に関連する符号理論分野における研究成果を、国際学術論文誌Designs, Codes and Cryptographyに論文発表を行い、国際学会 5th International Combinatorics Conferenceで講演発表を行った。さらに、Melbourne 大学でのDiscrete Structures and Algorithms Seminarなど、国内外で複数の研究集会で最新の研究成果の講演発表を行っている。