- 著者
-
熊谷 秋三
田中 茂穂
岸本 裕歩
内藤 義彦
- 出版者
- 日本運動疫学会
- 雑誌
- 運動疫学研究 (ISSN:13475827)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.2, pp.90-103, 2015-09-30 (Released:2020-04-10)
- 参考文献数
- 71
- 被引用文献数
-
1
自由生活下における単位時間の身体活動の強度を最も正確に推定できる方法は,加速度センサーを用いた活動量計である。加速度センサーを内蔵する活動量計は,加速度と身体活動強度との間に相関がみられることを利用して,活動強度を推定する。従来は,上下方向だけ(一軸)の加速度センサーであったが,最近は二~三軸の加速度センサーが主流である。歩行を含む日常生活でみられる活動の多くは,±2G(重力加速度;1 G=9.8 m/s2)以内であるが,歩行以外の日常生活の場合は,多くが数十mG かそれ以下,座位行動の場合は20 mG 程度以下であることから,座位行動を含む低強度の活動強度を評価するにあたっては,低強度での分解能が要求される。歩・走行とそれ以外の活動では,加速度と活動強度との関係式が異なるが,それらを判別するために,加速度の大きさを反映するカウントの変動係数,垂直と水平成分の比率,および重力加速度から姿勢の変化をとらえる方法などが提案されている。特に強度が弱い活動において,三軸加速度センサー内蔵活動量計(Active style Pro)の推定誤差が小さい。なお,自転車漕ぎ,坂道の昇り降り,重い物を持っての自立姿勢などにおいては,加速度の大きさは,必ずしもエネルギー消費量と対応しないため,機種やアルゴリズムを確認したうえで使用する必要がある。我々は,Active style Proを用いて久山町住民を対象に身体活動を調査した。活動強度3メッツ以上の活動量は男女ともに加齢に伴い有意に減少し,その身体活動パターンには性差が存在することを明らかになった。すなわち,男性では歩・走行活動が多い一方で座位時間も長く,女性では歩・走行以外の活動によって活動量を維持する傾向にあることが観察された。更に,三軸加速度センサー内蔵活動量計を用いた疫学研究の意義および可能性について要約した。最後に,現在継続中もしくは実施予定の三軸加速度センサー内蔵活動量計を用いた縦断研究(前向きコホート研究含む)を紹介した。これらの継続中の疫学研究は,三軸加速度センサー内蔵活動量計による客観的調査に基づいた軽強度,中高強度の身体活動および座位行動に関連したガイドライン開発に必要である有効な情報をもたらすであろう。