著者
冨塚 明
出版者
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.374-387, 2013-07-31 (Released:2014-08-13)
参考文献数
25

現在,北半球の二酸化炭素濃度は南半球と比較して約3ppmv 高くなっている。産業革命以降,この差がどのようにして生じてきたのか,炭素循環のボックスモデルを用いて検討した。南北大気間の交換係数を0.93/年としたとき,マウナロア及び南極点での測定値に近い値が得られることがわかった。この交換係数値は濃度の実測値や他のモデルでの算出結果にほぼ一致した。また現在の南北の濃度差は主に北半球に強く偏在(約95%)している化石燃料からの二酸化炭素発生量によるものであることが明らかとなった。仮に南半球での放出割合がもっと多ければ濃度差は現在よりも小さいものとなったであろう。一方,これまでの森林伐採などによる二酸化炭素放出量,海洋や森林への二酸化炭素取り込み量の南北での差は現在の大気濃度差に影響を与えるほど大きなものではなかった。さらに海洋と森林への小さな取り込みの差も実際にはお互い相殺しているものと思われる。