著者
冨岡 卓博
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、就学前幼児の描画での色使用の実態調査とその分析により、幼児における描画特性をとらえるとともに、色彩がもつ表現上の意味を明らかにすることにある。平成7年度8年度に受けた科学研究補助金によって、平成元年度より継続的に行ってきた調査のうち、平成3年度から平成8年度までののべ6年間で得たデータの整理をおこなった。その結果、美術教育においても感覚や性格、嗜好など測定する基礎的研究の可能性と妥当性を示すことができると再確信することができる情報を得ることができた。すなわち今年度は、6年間8学級グループ(年間延べ園児数で381名)のパス使用量測定のデータ整理をおこない、確たる規準値規準値を設定するための作業をし、年少(3歳児)、年中(4歳児)、年長(5歳児)の男児及び女児それぞれの規準値として扱う数値を得ることができた。調査対象の幼稚園が「園児自らが選ぶ活動」を軸としたカリキュラムで、描画することも含めて自由な活動からのデータである。ただ、こうした規準値設定の目的に対し、あらたに障碍となる問題として浮上したのが、測定対象のパスの消費しない、あるいはほんの僅かにとどまる子が予想以上に多い実態が示されたことである。そのため全体として、70%の多くを規準値対象児からはずさざるをえないと判断をした。こうした傾向の結果、各規準値の母数を目標としてきた100以上とすることができなかった。データ処理の上でも「描画活動をする子」の定義が課題となっている。また、規準値設定の対象園児とは別に、異なる教育カリキュラムの実践園を選び調査対象とした園児約50名について同様な調査方法をおこなって今年度末に3年間のデータを得た。今回、そのデータについてもさきに設定した規準値と直接比較研究ができることを確かめることができた。