著者
山本 洋子 橋本 明彦 冨樫 きょう子 高塚 純子 伊藤 明子 志村 英樹 伊藤 雅章
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.821-826, 2001-04-20 (Released:2014-12-27)
被引用文献数
1

掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性を調べるために,新潟大学医学部附属病院皮膚科で掌蹠膿疱症と診断した60症例について検討した.本学歯学部附属病院第二補綴科で歯性病巣を検索したところ,54例に慢性根尖病巣または慢性辺縁性歯周炎を認め,歯科治療を開始した.皮疹の経過観察を行い,「治癒」,「著明改善」,「改善」,「軽度改善」,「不変」,「悪化」の6群に分類し,「改善」以上の皮疹の軽快を認めた症例を有効群とした.口腔内アレルゲン金属除去ないし扁桃摘出術を行った症例を除いた31例について,歯性病巣治療の有効性を検討した.有効率は,歯性病巣治療終了群では70.6%,歯性病巣治療途中群では57.1%,両者を合わせた「歯性病巣治療群」では64.5%であり,無治療群の14.3%に比べて有意に有効率が高かった.有効群では歯性病巣治療開始後比較的早期に治療効果を認めること,罹病期間が長期でも治療効果が速やかに現れる症例があることより,歯性病巣は掌蹠膿疱症の主要な発症因子の1つであると考えた.本症では,従来のような扁桃炎などの耳鼻咽候科的な感染病巣および歯科金属アレルギーの検索とともに,自覚症状の有無に関わらず歯性病巣の検索も行い,個々の患者ごとに適切な治療方針を決定することが重要である.
著者
冨樫 きょう子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.1165, 1993 (Released:2014-08-12)

角層の保水機能と皮表および角質細胞間脂質の加齢による変化を明らかにするために,20歳代の男性17例(若齢群)と60歳代の男性10例(高齢群)の下腿伸側を被験部位とし,高周波伝導度測定装置による角層のconductance valueの測定と水分負荷試験を行った.さらに同部位よりカップ法を用いて皮表および角質細胞間脂質を採取し,high-performance thin-layer chromatographyにより脂質の組成を分析した.角層のconductance valueは水分負荷の前後ですべて高齢群が若齢群に比べて低値であった.単位面積あたりの皮表および角質細胞間脂質の総重量は高齢群と若齢群の間に統計的に有意な差を認めなかったか,高齢群は若齢群に比べて皮脂由来の脂質の重量が少なく,表皮由来の脂質(角質細胞間脂質)の重量が多い傾向にあった.セラミドの総重量では高齢群と若齢群に明らかな差はなかったが,セラミド分画では高齢群は若齢群に比べてセラミド1の割合が少なく,セミラミド4/5の割合が多かった.それぞれの群において,水分負荷前の角層水分量と皮表および角質細胞間脂質の関係を検討した結果,角層水分量は脂質の総重量や皮脂量,角質細胞間脂質量,各々の脂質分画の重量とは相関しなかった.しかし,角層水分量は若齢群と高齢群を合わせるとセラミド分画のうちセラミド1の割合と正の相関を,セラミド4/5の割合と負の相関を示した.これらの成績から,セラミドの組成が角層の保水機能に重要な役割を果たすことが示唆された.高齢者の保水機能の低下はセラミドの組成の変化によるものであり,皮脂量の低下とは直接関係しないと推察された.
著者
山本 洋子 橋本 明彦 冨樫 きょう子 高塚 純子 伊藤 明子 志村 英樹 伊藤 雅章
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.821-826, 2001-04-20
参考文献数
17
被引用文献数
16

掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性を調べるために,新潟大学医学部附属病院皮膚科で掌蹠膿疱症と診断した60症例について検討した.本学歯学部附属病院第二補綴科で歯性病巣を検索したところ,54例に慢性根尖病巣または慢性辺縁性歯周炎を認め,歯科治療を開始した.皮疹の経過観察を行い,「治癒」,「著明改善」,「改善」,「軽度改善」,「不変」,「悪化」の6群に分類し,「改善」以上の皮疹の軽快を認めた症例を有効群とした.口腔内アレルゲン金属除去ないし扁桃摘出術を行った症例を除いた31例について,歯性病巣治療の有効性を検討した.有効率は,歯性病巣治療終了群では70.6%,歯性病巣治療途中群では57.1%,両者を合わせた「歯性病巣治療群」では64.5%であり,無治療群の14.3%に比べて有意に有効率が高かった.有効群では歯性病巣治療開始後比較的早期に治療効果を認めること,罹病期間が長期でも治療効果が速やかに現れる症例があることより,歯性病巣は掌蹠膿疱症の主要な発症因子の1つであると考えた.本症では,従来のような扁桃炎などの耳鼻咽候科的な感染病巣および歯科金属アレルギーの検索とともに,自覚症状の有無に関わらず歯性病巣の検索も行い,個々の患者ごとに適切な治療方針を決定することが重要である.