著者
冨永 千代子 中村 睦美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E3P3207, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】座位姿勢時の座圧では、座面・背もたれ角度やクッションの有無に着目した報告は多く見られるが、足台やレッグレスト角度に着目した報告は少ない.本研究の目的は、足台の高さやレッグレスト角度の違いによる座圧の変化について検討する事である.【方法】対象は健常成人21名(男性7名、女性14名)で、平均年齢33.4±9.2歳、平均身長163.2±8.5cm、平均体重59.1±11.4kgであった.対象者には研究内容について説明を行い文書にて同意を得た.方法は、簡易体圧測定器(ケープ社製セロ)を使用し、左右坐骨への座圧を各3回ずつ計測し最大値を採用した.対象者は治療台に端座位となり胸の前で上肢を組み、1)股・膝関節90度となる高さの足台使用時、2)1)より高い足台使用時、3)足台無しで足底面離床の3条件で計測を行った.また、リクライニング車椅子に深く腰掛け、座面に対するレッグレストの角度を0°、15°、30°、45°、60°、90°と変化させ計測した.統計は、各条件間における座圧の比較に分散分析を用い、体重と座圧の関係にはピアソンの積率相関係数を求めた.有意水準は5%未満とした.【結果】足台の条件を変化させた際、座圧の平均値は1)95.6±29.5mmHg、2)138.9±29.2mmHg、3)81.9±21.1mmHgで、足台なしの条件で最も低値を示し、各条件間で有意差がみられた.レッグレスト角度による座圧の変化は、レッグレスト角度が大きくなると座圧は小さくなる傾向を示し、0°で73.66±23.5mmHg、15°で68.78±21.4mmHg、30°で67.26±19.4mmHg、45°で64.69±18.7mmHg、60°で64.08±13.4mmHg、90°で63.95±15.2mmHgとなり、0°と30°、0°と45°、0°と60°、0°と90°の間に有意差がみられた.各条件において体重と座圧に相関関係は見られなかった.【考察】車椅子座位において股・膝関節90度での座位は最も良肢位と言われ、推奨されている.そのため我々は、股・膝関節が90度となる様に高さを調節した足台を使用した際に最も座圧が低いと予想したが、実際は足台無しで足底面離床時に最も低値を示した.これは足底面が離床する事で下腿が下垂し、大腿遠位部後面の接触面積が増大し、坐骨部への圧が分散された為と考えられる.またレッグレスト角度による座圧の違いは、レッグレスト角度が大きいと座圧は小さくなる傾向を示し、90度で最も低値を示した.レッグレスト角度が大きくなると、下腿が下垂し、大腿遠位部後面の接触面積が増大し、坐骨部への圧が分散された為と考えられる.本研究では坐骨部へかかる圧力に着目し健常成人での検討を行ったが、高齢者を対象とした場合、車椅子の座位姿勢は下肢の循環状態や浮腫なども考慮に入れる必要がある.今後は実際に車椅子を利用する高齢者を対象としさらに検討を続けたい.